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【18禁】さくらシュトラッセ

情報

  • 公式サイト
  • 【18禁】さくらんぼシュトラッセ(ファンディスク)

Eine Liebesgeschichte in "Sakura Strasse"→A Romance in "Sakura Street"

お馬鹿な展開

始まりは自衛隊のスクランブルシーンから。 魔女っ娘(マリー・ルーデル)と空中戦に突入。

パイロットA『……国籍マークは付けていない。機種不明。こんな機体に見覚えが……あるわけがない。かなりの小型機だ』
パイロットB『あの、こんなことは言いたくないんですが、あれってもしかして……』
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パイロットA『形状は−主翼が見当たらない。棒状の物体。その上に何か、人の形をしたものが乗っている。髪の長い女のような……動いたぞ、こっちを見ている!』
管制官『何が何だか分からないんですが……。写真に撮影できますか?』
パイロットB『……魔女だ』
管制官『はい? 今、何と?』
パイロットA『お前にもそう見えるのか? 確かにあれは、魔女としか言いようがないんだが…』
管制官『……おほん、ふざけている場合じゃありません。真面目にやって下さい』
パイロットB『ふざけてなんかいませんよ! こっちに来て見てみろ!女の子が箒に乗って飛んでいるんだ!』
管制官『あなた達、正気ですか!?』
パイロットA『実を言うとあまり自信がない。とにかく警告を開始する。二番機は接近して写真撮影。行くぞ』
パイロットB『りょ、了解!』
???「うあーんっ! どうしよ〜〜っ! なんか来るよ、こっち来るよぉっ!」
???「……だからもっと低く飛べと」
???「そんなこと言ってもっ! 下の方飛んでたら陸地が見えないんだもんっ!」
???「だからって、見つかったら怒られるのに」
???「これって領空侵犯っ!? それとも不法入国!?」
???「たぶん、両方」
???「ふええええんっ! やっぱり捕まったら刑務所行きなのかなーっ!?」
???「その前に撃ち落とされる」
???「やだやだやだっ! 私ってばファーストキスもまだなのにっ! こんなところで死にたくない〜!!」
???「……マリー、なんか光ってる」
???「ひぅっ!? なになになにっ!? 撃ってるの撃ってるの!? 私、撃たれて八つ裂きでバラバラ死体でお魚の餌っ!?」
???「落ち着いて。発光信号。何か言ってるみたい」
???「うああああんっ! わかんないわかんないっ! あんなのチカチカされても何言ってるか分かんないっ! ルゥリィ、あれってどういう意味っ!?」
???「ワタシが知るわけない」
???「どうしようどうすればどうしようもないっ!!?」
???「うるさい、落ち着け。たぶん、引き返せとかそういう意味だと思うけど――」
???「そんなの無理だよぉ〜〜っ! もう夜だし、このまま陸地まで行かないと保たないよぉ〜〜っ」
???「……ワタシ、泳ぐの嫌い」
???「やっぱり、このまま真っ直ぐ行くしかっ」
???「ジエータイだし、撃ってこないと思う」
???「ホントにっ!? このまま飛んでても――」
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???「ルゥリィの嘘つきぃ〜〜っ!!」
???「ただの警告だと思うけど…、たぶん」
???「たぶんって! 近いよ近いよっ! こんなの当たったら死んじゃう死んじゃう逝っちゃうぅぅぅぅ〜〜っ!!!」
???「その台詞紛らわしいから。もう少し冷静に――」
???「やだやだやだっ! こんなのそんなの、きゃわああぁぁぁぁぁっ!!!!」
???「……聞いてないか」
パイロットA『なんだ、あの光は?』
パイロットB『うわっ! 何か撃ってきたぞっ!?』
管制官『攻撃!? 兵装の種類は分かりますか!?』
パイロットA『分からん、何か光線のようなものが発射された』
パイロットB『レーザーですよレーザー!畜生、どこまで非常識なんだあいつは!』
パイロットA『いかん、また光ったぞ! 散開しろ!』
パイロットB『く…っ、かすめやがった! この魔女め……舐めやがって!』
パイロットA『熱くなるな。正体が分からん以上うかつに近づかない方がいい』
管制官『まもなく海岸線に到達します、何とか針路を変えさせられませんか!?』
パイロットA『やってみる。俺が前に出るから二番機は――――緊急事態、侵入機が急降下している』
パイロットB『畜生、逃がすか!』
パイロットA『待て、つっこむな! ええい、あの馬鹿がっ!』
管制官『ピクシーリード、どうしましたか!? 状況を知らせてくださいっ』
パイロットA『ピクシー2は不明機と空戦に入った。ドッグファイトだ。クソッ、あの魔女……なんて飛び方をしてやがる!』
パイロットB『コイツ、速いっ!? ええい、ちょこまかとっ!』
パイロットA『高度に気をつけろ!』
パイロットB『な…っ、うわああああっ!!!』
パイロットA『いかん! 光線が当たったぞっ』
パイロットB『くそ、やっちまった! エンジンストール、失速するっ』
パイロットA『高度が低い! 脱出しろ、早く! 落ちるぞ!』
パイロットB『は、はいっ』
管制官『…………………………』

魔女っ娘サイズだとレーダーに映らない*1とか、ツッコミ所は沢山あるけれど、 私が気になったのは、自衛隊のパイロットなのに、憶測の報告がやたら多いこと。 憶測で物を言うのは正確な情報把握の障害になるので、軍隊組織では特に厳しく注意されるはず。 だから、こういう憶測に基づいた台詞はありえない。

管制官『ピクシー2、ピクシー2、応答してください。……ピクシーリード、状況を報告してください』
パイロットA『こちらピクシーリード。ピクシー2は海岸線に墜落した。パイロットはベイルアウト。海上を漂流中と思われる。現在位置は……おそらく美園市上空』
管制官『……了解。警察および消防に通報。救助に救難隊のUHを向かわせます。不明機はどうなりましたか?』
パイロットA『……すまない、見失った。ターゲットロスト。指示を請う』
管制官『別名のあるまでそのまま上空より監視を続けてください。可能なら漂流中のパイロットの一特定をお願いします。事故現場の状況はどうなっていますか?』
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パイロットA『墜落機は海岸沿いの道路上で炎上中。巻き込まれた車などは無いと思われるが――』

この場合、道路上に墜落した事実、上空から周囲に人や車両等の存在が確認できないこと、詳細確認には地上部隊を派遣する必要があること等を報告すべきであって、「巻き込まれた車など無いと思われる」等の憶測での報告は厳禁であろう。 細かいことと言えば細かいことであるが、軍の精鋭パイロットが魔女っ娘1人に翻弄される所がコメディとして面白いことを考えると、パイロットは精鋭らしくあって欲しい。 スクランブルしたパイロットが下手糞だったのでは、コメディとしての面白さが半減してしまう。

で、一機撃墜、主人公を巻き込んで墜落、瀕死の重傷でオープニング・ムービーへ。 というところなんだけど、シリアスなシーンでも平然と笑いを取ろうとしてくる。

水着みたいな黒い衣装に、裏地の赤い黒マントのコスプレ。いくら幻想とはいえ、変な女だ。
にしても、いまわの際にこんな幻覚を見るなんて、ちょっぴり自分が信じられなくなってしまったり。
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春美「そ、走馬燈なら、もうちょっとまともな光景で……」

さすがコメディだけあって、自衛隊はこの後一切出て来ない。

その他、ヤマトねた他、沢山。

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マリー「ほら、分数の説明って、ケーキを切るのが定番じゃないですか。実はですね、こんなこともあろうかと、秘蔵のチョコレートケーキを用意してあるんです」
春美「お前は宇宙戦艦工場長か。たまたま食いたくて作っただけだろ?」

というような作風が何か壷にハマった。 体験版推奨!

主人公(綾瀬春美)

ハッキリ言って、主人公の性格はよろしくない。 しかし、主人公がヘタレな行動を取った時は、ほぼ必ず、コメディ展開で主人公が痛い目に遭うので、見ていてあまり不快な感じはしない。 また、ヘタレではあるが、無意味に引っ張る展開がないため、話のテンポは良い。

店長代理兼料理長としてかもめ亭を再開した主人公であるが、人手不足と怪我と未熟さのため、初日は散々な出来に終わる。 そこへ、マリー・ルーデル&ルゥリィ登場。 マネージャの綾瀬優佳(義姉)は、マリーの料理の腕を見込んで料理人として雇用、マリーの希望に添って主人公を厨房から閉め出す。 マリーのおかげで店は繁盛する。 しかし、その日の終わり、主人公は、マリーが魔法で料理を作っているのを見てしまう。 鬼のように激怒する主人公だが、店を救った恩人に対してそりゃないよねと、普通の人は思うだろう。 私も思う。 しかし、マリー自身が、反則だと認めてしまう。 反則だと自覚していたからこそ、魔法を使う事を一言も相談せず、主人公を厨房から追い出したのだと。

春美「いや、いくら何でもそれは反則だろ」
美味しければ何だって構わない。そういう考え方だってあるかも知れないけど――
春美「自分で分かってるんだろ? 反則だって。だから隠してた。違うか?」
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マリー「…………違わないです」

主人公の気持ちも分からないではないが、どう考えても答えは一つしかない。

春美「……でも、マリーには謝らないと」
アイツは俺と『かもめ亭』の為にやってくれたのだ。それは分かっている。
春美「……なのに」
許せない。どうしても許せない。そう思ってしまうのは、どうしてだろう?
春美「俺が…、わがままなだけなのか…?」
ゆっくりと目を閉じながら、俺は呟く。
春美「自分の力で、何とかしたいなんて…」
このままでは、父さんの、アップルソースの香りが――


優佳「マリーちゃんが悪いなら、その理由を言ってみなさいよ」
春美「そ、それは……」
秘密にするって約束した上に、言っても信じて貰えそうにないことだ。
優佳「黙ってちゃ分からないでしょ」
春美「と、とにかく俺は嫌だからな!」
――でも、本当は分かっている。
優佳「アンタねぇ……」
こんなの、ただの反抗期の子供じゃないか。
優佳「とにかく、このままじゃ困るのよ」
優佳「何で喧嘩してるのか知らないけど、あんな嫌な雰囲気のまま明日からお店開くの?」
春美「……そ、それはそれっていうか」
優佳「とにかく仲直りしてきなさい」
春美「簡単に言うけどなぁ……」
優佳「せめて話をつけてきなさい。でもって、明日からどうするのか決断しなさい」
春美「決断って……」
優佳「しっかりしろ店長代理」
春美「え…、あ……」
何も、言い返せなかった。
だって、従業員の間に深刻な諍いがあるなら、当然ながらそれを収めるべき役割は俺自身に課せられるべきで――
春美「でも…。いいのか…?俺はマリーを追い出すかもしれないぞ?」
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優佳「好きにすればいいわ。春美はそんな子じゃないって、知ってるけどね」
春美「ゆー姉………」
優佳「いいから話し合ってきなさい」
春美「……分かった、行ってくる」
実際のところ、未だに心の整理はついていない。
それでも、俺は重たい腰を上げて立ち上がり――
優佳「……ったく、世話が焼けるんだから」
春美「ごめん…、あと、ありがと…」
ゆー姉に見守られながら、部屋を出た。
大きく深呼吸してから、屋根裏の部屋へと顔を出す。
春美「おい、マリー……って」
部屋の中を見回してみても、誰もいなかった。
春美「何だよ…、気合い入れてきたのに」
小さく息をつき、どうしたものかとその場に立ちつくす。
春美「…………………………」
結局のところ、俺は許さざるを得ないと思う。
マリーがここに住むことだけでなく、魔法で料理することも――だ。
春美「俺には…、どうにも出来なったんだもんな…」
二日前、一人で厨房に立ったときの醜態を思い出す。
早希さんに「不合格」とまで言わしめたあの状況を思えば、『かもめ亭』にはどうしてもマリーの力が必要なのである。
たとえ、それがどれだけ許し難い行為でも――
春美「…………………………」
どうということはない。俺一人がちっぽけなこだわるを捨てればいい話。
手作りと信じて食べに来るお客さん達を騙すことにはなるけれど、それも店長代理の俺が責任を負えばいい。
俺一人が悪人になれば、全ては丸く収まって――

ところが、マリーが逆転満塁ホームランを!

ルゥリィ「こんなの、魔法でやればいいのに」
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マリー「だめだよ…、ちゃんと自分で作るって…決めたんだから」
ルゥリィ「なんで今さら?」
マリー「だって…、私…ここで働きたいし…」
ルゥリィ「…………」
マリー「だから、その…。真剣な人の前で魔法とか使ったら…。嫌われちゃうのも当然だし。」
ルゥリィ「ハルミに嫌われたくない?」
マリー「と、とにかくっ!もうお料理に魔法は使いたくないのっ!」
菜箸をぎゅっと握りしめるマリーは、後ろからでも分かるくらいに真っ赤になっていた。


ルゥリィ「後ろ」
マリー「後ろ……って」
春美「なかなか上出来じゃないか」
彼女の肩越しに調理台の上を覗き込み、完成したばかりの一皿を眺める俺。


マリー「魔法は使っていません!ちゃんと自分の手で作りましたからっ!」
それは、見ていたから知っているけれど−
マリー「お願いします! レシピ通りには作りましたけど…。これでいいのか採点してください!」
春美「そ、それは別に構わないけど……」

で、やっぱり、最後にはオチがつく。

マリー「はい…っ♪ これで今夜はぐっすり眠れそうですっ」
春美「…………お前、何言ってんの?」
マリー「ふぇ…? 何かおかしなこと言いました?」
どうやらコイツは、肝心のところで状況を把握していないらしい。
春美「朝までに全部のメニュー覚えてもらうからな新人!」
マリー「え、え…っ?」
春美「まずは仕込み! 明日の準備まだしてないし!その後研修! 寝る暇なんてあると思うなよ!?」
マリー「あ、あの……」
春美「どうした早くも怖じ気づいたか新入りっ!」
マリー「えっと……」
春美「さーーてっ! 張り切って行こうぢゃないか!新人イジメは古参の特権だからなっ!!!」
ルゥリィ「いきなり調子に乗ってる」

まあ、シリアス展開で考えても、このオチは当たり前なのだけど。 ここまで、体験版で。

あと、自他共に認めるおっぱい星人だが、それがルゥリィ攻略ルートではトラブルの元に…。

優佳「ったくもう、あんまり胸ばっかり見てたら……ん?」
ルゥリィ「ふ、ふふ、うふふふふふふ……」
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優佳「な、なんかアタシ、背後からすごいプレッシャーを感じるんだけど」
春美「……奇遇だな、俺なんか正面から受け止めてるぞ」


最も胸が強調されて、ぽよんぽよん揺れてしまうポーズなのである。
マリー「ちょ、あのっ! こんな時にどこ見てるんですかっ!」
春美「見るなと言われても目が勝手に…!」
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ルゥリィ「フ,フフフフフフフフ……」


春美「い、いいい今は大問題なのですよっ!主にお姉様方のその胸部がっ!!!」
クラウディア「あら、ハルミってばアタシのお乳に興味津々――」
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優佳「って、何よこの殺気は?」
ルゥリィ「ククク…、ウフフフフフフフフ……」

察しの悪さは作者の故意。

ルゥリィ「でも、気づかないハルミもどうかと」
春美「う、うるさいやい! しょうがないだろ?」
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ルゥリィ「ゆーざーの皆さんも、だぶんとっくに知ってる」
春美「そ、そうなのかっ!!?」

小野寺早希

普段はオチャラケた人。

早希「春美くん? どったの、そんなに見つめて…」
春美「え、えっとですね…、その、何と申しますか…」
人呼んで『美園の海○雄山』。それがこの人の異名。
的確な助言は有り難いものの、辛口の批評は近隣の料理人達を震え上がらせてもいて…
春美「あの、早希さん…!」
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早希「きゃっ☆ もしかして告白かしらん♪」
春美「へ……?」
早希『離れてみて、初めて貴女の大切さが分かりました。好きです、大好き、もう駄目、愛しちゃってます!』
早希「とか言われちゃうわけねっ!? このあたしがっ!」
……普段はこの通り、ちょっとばかり茶目っ気の強すぎる姉ちゃんなんだよなぁ。


春美「コホン…、それでですね、一つお尋ねしたい事があるんですが」
早希「スリーサイズなら、上から――」
春美「違いますっ!」
早希「優佳のスリーサイズなら、上から90――」
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優佳「何の話しとるかっ!!!」

でも、相手のためなら、厳しいこともキチンと言える人。

早希「ふむ、感想ねぇ……」
優佳「早希、ハッキリ言ってやってもいいわよ? コイツが聞きたいのはお世辞じゃなさそうだし」
春美「はい、出来れば今後の参考にさせて頂ければと――」
早希「……いいのね? ホントに言っても」
春美「へ……? え、ええ…」
早希「優佳、ついでだからあなたも一緒に聞きなさい」
優佳「アタシも? 何よいきなり真面目な顔して」
一旦仕事に戻りかけていたゆー姉も、何やら戸惑い顔でその場に立ちつくしている。
春美「あ、あの、早希さん…?」
早希「55点」
春美「え…………?」
早希「点数つけるなら、100点満点で55点。それがさっきのお料理の、あたしからの評価ってとこ」
優佳「…………………………」
一瞬、しんとした静寂が俺達の周囲を包み込む。
春美「ち、ちなみに、その、合格点は……」
早希「60点」
それは、つまり――
早希「不合格ね」
春美「…………………………」
優佳「ちょ、ちょっと早希ってば、からかうのも程々にしてよね」
早希「はっきり言えって、優佳が言ったんじゃない」
優佳「そ、そりゃ言ったけど…、でも…っ」
早希「優佳、あなたも何でこんなこと許可したわけ? 不味いとまでは言わないけどさ、これじゃお店の評判落とすだけだと思うわよ?」
春美「…………………………」
優佳「あ、あたしは…、あたしの判断だと、春美の料理なら十分通用するって思ったから…」
早希「確かにそこらのファミレスよりはよっぽど上等だけどさ、『かもめ亭』で出す以上、比較の対象は美咲さんの料理なわけ。そこんとこ分かってる?」
早希さんの言葉が、ぐさりと胸に突き刺さる。
親父や母さんにはまだ及ばない。それは分かっていた。
それはそのまま店の評判にも直結するって、そんな当たり前のことなのに…、なのに俺は…
優佳「それでも55点は低すぎるっ! どう考えても、もっといい線行ってるじゃないっ!」
そういや、ゆー姉のつけた点数は確か……
早希「興奮しないの。…ったく、優佳ってば春美くんのことになるとすぐムキになる」
優佳「な、何言ってるのよ、アタシはただ、アンタの舌がおかしいんじゃないかって――」
早希「身内だもの、欲目が出るわよね?」
優佳「……な、そんなこと、別にっ」
早希「優佳は昔から春美くんには甘いもんねぇ…」
いや、その言葉には大いに異論が――
……なんて言って話を逸らしている場合じゃないな。
優佳「と、とにかくっ! 春美の料理は何て言っても――」
春美「ゆー姉、もういいから」
呼吸を整え、気分を落ち着けながら二人の間に割り込んだ。
優佳「な…っ、春美…?」
春美「早希さん、的確なご意見ありがとうございます」
早希「あ、うん…、あたしも出来ればこんなこと言いたく無かったんだけどさ」
春美「いえ、本当のことを言って頂けて助かりました」
お金を払って食べに来てくれたお客様の、正直な意見。
どれだけ辛辣な意見でも、知っておく必要があることだ。
優佳「春美……」
春美「それで、もしよろしければ、具体的にお気づきの点などあれば教えて頂きたいのですが…」
改められる点は、改めなくてはいけない
せめて、少しだけでも母さん達に追いつけるように――
早希「……そうね、一言で言えば『雑』ってとこかな」
春美「雑……ですか?」
早希「今日、忙しかったんでしょ?一人じゃ注文こなすだけで精一杯だったでしょ?」
春美「な…、なんで分かるんです…?」
早希「分かっちゃうのよね、そういうの。お料理って、作ってる人のことが全部出ちゃうから」
それは、言われてみれば確かにそういうもので――
早希「でもね、そういう事情はお客さんには関係ない。いくら忙しくても雑な料理を出していいってことにはならない。そうでしょ?」
春美「……はい、仰る通りです」
早希「たぶん、優佳が食べた時にはもっと丁寧に作ってあったんでしょうね。時間があったから、って理由で」
優佳「…………………………」
早希「でも、今の春美くんは、それと同じものをお客さんに提供出来ないでいる…。つまり、一人じゃ無理なのよ」
春美「そう…なのかもしれません…」
でも、だからってどうしようもないことではあるけれど…
早希「今からでも遅くないと思うわ。お店の評判落とさないためにも…、美咲さんが帰ってくるまで休業した方がいいんじゃないかな」
優佳「な…っ、早希、アンタ…っ」
早希「他人の家のことに口出す気はないけどね。これは無責任な友人からの一つの意見ってとこ」
春美「…………………………」
たぶん、早希さんは本当に無責任に言ってる訳ではない。
おそらくは、こころから『かもめ亭』のことを心配してくれているのだろうけど――

厨房を追い出された主人公に的確なアドバイスも。

早希「春美くん」
早希さんは、辛口の感想で近隣の料理人達を恐れおののかせている人物だ。
そんな早希さんに、あそこまでの絶賛をされるなんて、マリーはやっぱり本物の天才なのか――
早希「こらっ! 男のヤキモチはみっともないぞっ?」
春美「えっ? あ、すいません、ぼーっとして…」
……いや、それよりもヤキモチって
早希「はい、2000円。どうせまたつまんない比較して一人で勝手に空回りしてるんでしょ?」
春美「……お預かりします。というか、早希さんがいちいち点数つけるからじゃないですか」
早希「現実は現実として知っておく必要があるでしょ?」
春美「まあ、そうですけど…。200円のお返しでございます」
お釣りを手渡しながらも、ちょっとだけ愚痴っぽい声色になってしまう
早希「あ、レシートいらないから。どもね」
春美「ありがとうございました」
それにしても――、現実、か。
早希「全くもお…、そうやって落ち込んでないで春美くんももっと頑張ってみなさいって」
春美「いや、そういう適当な励ましをされてもですね」
早希「才能なんて努力でいくらでも補いがつくわよ。せっかく天才少女が現れてくれたんだからさ、いい機会だし弟子入りさせてもらったら?」
春美「弟子入りって……」
俺が? あの小娘に?
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早希「ちっぽけなプライドが許さないならさ、こっそり技術を盗み取りなさい。職人ってそういうものでしょ?
春美「ちっぽけですか……」
いちいち正論なだけに、言葉の刺が心に突き刺さってくる。
早希「ま、どっちにしても後ろ向きなのは見苦しいからさ。無駄に熱血してる春美くんの方が端から見てて楽しいし」
春美「別に早希さんを楽しませる為に熱血してるんじゃありませんよぉ…」
早希「とにかく、元気出しなさいって。んじゃ、またね!」
言うだけ言って、颯爽と店を出て行く早希さんである。
春美「ま、俺より旨いモン作るのは事実だし…」
あれでも俺のことを気遣って助言してくれたんだ。
前向きに、検討してみるべきだと思った。

高橋さんのデートのお膳立てもする。

早希「ふむふーむ、なるほどね」
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高橋さん「…トホホ、早希ちゃんにまで僕の情けない姿が露にされるとは」
約一名、不幸を謳歌している人が。
早希「想い人に見られるより幾らかマシっしょ」
高橋さん「仰る通りで何も言い返せないよ…トホホ」
早希「ま、そんなことはともかく」
そんなことにされて高橋さんがカクンと肩を落とす。
まぁ、相談しているところを、早希さんに見られたのが運の尽きかも知れない。
早希「その唯さんとやらに来てもらわないと話にならないわね」
高橋さん「え? どうして…」
優佳「告白するにも電話って訳にはいかないと思いますよ」
早希「そうそう♪ やっぱ目を見て言ってもらうほうが嬉しいものよ」


高橋さん「ゆ、唯さんっっっ」
唯さん「え? あ、はい」
沈黙が破られた瞬間。
アタシはゆっくりと二人へと振り返る。
高橋さん「ぼ、ぼく…僕…僕…とっっっ」
早希「そこだ、行け!」
かりん「高橋さん次の台詞忘れたのかな?」
早希「いや、緊張してんだって」
マリー「好きです、ですよ高橋さんっ」
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早希「今だ、言ってしまえっ! 好きって言えよコンチクショウっっっ」
高橋さん「ぼ、僕と――」
高橋さん「結婚して下さい!」
早希「飛躍しすぎだろ、おい」
マリー「飛躍しすぎてませんか?」
かりん「なんだかわかんないけど頑張れ!」

綾瀬優佳が倒れた時は、看病と店の手伝いを引き受ける。

早希「くす、心配しなくていいよ。優佳ならよく眠ってるから」
春美「そ、そうですか」
早希「と言う訳で、スーパー何でも出来る女、早希さんは、皿洗いを手伝いましょうか♪」
早希さんは縮こまる俺に小さくウィンクして、汚れた皿が溜まった流しへと足早に向かう。

綾瀬優佳の恋愛の背中も押す。

早希「あなた達って血は繋がってないんでしょ?だったら何が悪いって言うの?」
優佳「それは……」
早希「特別に、いいこと教えてあげよっかな♪義理のきょうだいってね、結婚できるのよ?」
優佳「……知ってる」


早希「そうやって意地張って、世間の目とやらで自分を誤摩化して――」
優佳「早希には分からないわよっ」
早希「甘えるな」
早希「あたしにあんたの気持ちなんて分かるわけないでしょ」
早希「これは優佳の問題であって、あたしの問題じゃないの」
優佳「………」
早希「そうやって拗ねていれば問題が解決するわけ? 自分が出来ないことを誰かが助けてくれたりするわけ?」
早希「違うでしょ」
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早希「優佳が逃げ出してどうするのよ。誰のためでもない、自分のことでしょ?」
早希…怒ってる。
アタシの態度に対して、早希が怒っているのではないことが分かっていた。
早希は…アタシの為を思って怒ってくれている。
早希「言ってみなさい。言葉にしてみないと、気持ちの整理だって付けられないでしょ?」

綾瀬春美の海外渡航時には店を手伝っている。

春美「それに、店の方も閉めたく無かったし…、母さんが退院してくるのを待ってたら…な」
クリス「あれ、かもめ亭ってそのまま営業続けてるんですか?」
春美「ああ、母さんも帰ってきたし…、今は臨時で早希さんにも手伝ってもらってる」
それでも、人手が足りないのは相変わらずだけどな。

こんな素晴らしい小野寺早希が攻略できないとは何事か!

早希「ねーねー、春美くんアタシと付き合う気はない?」
春美「って、なんで俺っ!!?」
優佳「玩具だからじゃない?」
早希「んで、どーよ春美くん! 返事を聞かせて♪」
春美「や、止めてくださいよ! 冗談キッツイですよ!?」
早希「冗談とかじゃないんだけど? 今までは優佳に遠慮して黙ってたけどさ…、割と好みよ?」
優佳「いや、アタシは関係ないしっ!?」
マリー「あ、あの…、これって告白ですよね?」
ルゥリィ「どう見ても」
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早希「ほれほれ、春美くぅ〜ん♪ 実は好きでした〜って言えよコノヤロウ♪」
春美「事実に反することは言えませんってばっ!」
早希「……むぅ、また振られた」

クラウディア・クレメント

この人、馬鹿。

クリス「だって姉さん、こんな場所でその格好は……」
クラウディア「何言ってるのよ、これが悪の首領たるクラウディア様の正装じゃない!」
クリス「でもでも、ちょっと目立ち過ぎと言いますか…」
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クラウディア「目立たなくてどうするのよ! 私達はね、今からこの国を悪の力で支配するのよ! 支配者にはそれなりの威厳ってものが必要でしょ!」

しかし、本当は、馬鹿やってみせてるだけの痛い妹分想いの良いお姉さん。

クラウディア「どう見てもデートそのものじゃない」
春美「実は俺もそんな気がしてた」
クラウディア「アタシ、物陰から覗いてたって言ったでしょ? あれって冗談とかじゃないのよ」
春美「馬に蹴られそう、ってのも?」
クラウディア「マリーがね、すごく楽しそうだったのよ、邪魔していいのかどうか、かなり迷ったわ」
そして結局は邪魔をしにきたクラウディア。
いい性格してるよ。
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クラウディア「一つ忠告しておくけど、あの子を泣かせたら許さないから」
春美「どういう意味だよ?」
クラウディア「振るなら本気にならないうちに済ませなさい」
春美「…………は?」
クラウディア「あの子、どう見てもアナタのこと好きでしょ」
春美「いや、まさかそんな――」

実は勘も鋭く、おせっかいな一面も。

クラウディア「それよりも、さっさと本題に入りましょ」
春美「……何のことだ?」
クラウディア「今の、電話で済む用事でしょ。どう見たって、『ついで』にしか思えないわよ」
ずばりと指摘されて、軽く自嘲の笑みを浮かべる。
春美「あからさまな莫迦だと思ってたが、意外と察しがいいな?」
クラウディア「喧嘩売りに来たのかしら〜?」
春美「……すまん」
大きく一つ、深呼吸。
春美「ちょっと、色々聞いておきたいことがあってな」
クラウディア「答える義理は無いわね」
春美「今すぐ溜まったツケを払って貰おうか」
クラウディア「お、おほほほほ…っ! このアタシに脅迫が通じると思って!?」
春美「次からメシ作ってやらねえもんね〜〜」
クラウディア「アタシは寛大な女なのよ。何でも聞いて頂戴な!」
勝利の快感で、ちょっと気が晴れた。
春美「まあ、俺には割と関係ない話なんだがな…。マリーとクリスのことが、少し気になって」
クラウディア「あら、関係なくはないでしょ?」
春美「いや、関係ないし。あの二人って婚約者らしいけど、ちゃんとお付き合い出来てるのか心配なだけで…」
クラウディア「そんなのに興味持つ時点で、何か事情があるのがバレバレ」
春美「うぐ…………」
畜生、クラウディア如きに言いくるめられるとは。
クラウディア「くっくっく…っ、あなた、マリーに振られたんですってね?」
春美「知ってんのかよ!?」
クラウディア「クリスから聞いたわ。いやあ、アタシ他人の失恋話は大好物なのよね〜〜」
春美「うああ…、クリスの奴ぅぅ〜〜〜」
おのれ、こんなに口が軽いとは思わなかったぞ。
クラウディア「でもまあ、責めないであげて。他に相談出来る人がいなかったみたいなのよ」
春美「…って、相談?」
クラウディア「婚約の件、何とかならないか相談してきたわ」
春美「な、なんだよそれ……」
心の中で、ざわざわと波が立つ。
クラウディア「アタシが気が付く程度のこと、あの子が気づかないとでも思って?」
春美「何の話か分からん」
クラウディア「前にここで言ったでしょうが。マリーがあなたを好きってこと、バレバレなのよ」
春美「いや、でもアイツはだな――」
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クラウディア「振られたから違うだろって? それ本気で言ってる?」
もちろん一縷の期待はあったし、マリーの好意を全く感じないってワケじゃない。
春美「だから、重要なのはアイツの気持ちじゃないんだろ?」
クラウディア「それより重要な事が、どこにあるって言うのよ?」
春美「俺は振られたんだよ。どうしろって言うんだ?」
クラウディア「あなたは、どうしたいのかしら?」
考えるまでも無いことだ。
春美「クリスの奴はマリーのことが好きなんだろ? マリーの方だって、クリスを嫌ってるわけじゃない。何しろアイツは俺よりもクリスを選んだんだからな」
クラウディア「だから?」
春美「応援してやるべきだろうが…。マリーは俺なんかのことは忘れて、幸せになればいい」
それが、『横恋慕』をしてしまった俺にとって、唯一果たせる義理なのだから。
クラウディア「それで、アタシに協力しろって言うの?」
春美「そうだ、そいつを頼みに来たんだよ」
クラウディア「言われるまでも無いわ。クリスはアタシの可愛い弟だもの」
このとき彼女は、いつもの様に「妹」とは言わなかった。
クラウディア「あの子はマリーのことを慕っている。それがどういう『好き』かは別にして、想っているのなら応援してあげたいじゃない?」
コイツにとっては珍しい、慈しむような声色。
つまりは、真面目に言ってるってことだ。
春美「俺も、クリスのことは気に入ってるんだ。……だから、全く同感だな。」
クラウディア「上手くいってるじゃない。あの子はマリーをデートに誘って、マリーもそれを受けた。仕組んだんでしょ?」
春美「あ、ああ…、でも……」
クラウディア「本人だけが乗り気じゃない」
春美「そうだよ、それが気になって……」
クラウディア「婚約解消なんて言い出すくらいだものね」
俺には、分からない。
どうしてクリスは、そんなことを言い出したんだ?
クラウディア「意気地なしね」
春美「ああ…、もうちょっとしっかりして貰わないとな」
クラウディア「クリスじゃなくて、あなたのことよ」
春美「は……?」
クラウディア「クリスがマリーをしっかり捕まえていたら、仕方ないって諦めもつけられる。そういうことじゃなくって?」
春美「い、いや…、そうじゃなくて…」
クラウディア「違うの?」
春美「…………………………」
何も、言い返せなかった。
穴でも掘って、埋まりたい気分だ。
クラウディア「まあいいでしょ。一つだけ教えてあげるわ」
やめてくれ。そんな優しい目で俺を見るな。
クラウディア「あの二人の婚約はね。本人達の意思じゃないの」
春美「あ、ああ…、親同士がどうとか聞いた気がする」
クラウディア「仲がいいのを見て、周りが勝手に盛り上がった――」
クラウディア「実際は、そんなアットホームな話ですらないのよ」
春美「……どういう意味だ?」


クラウディア「でも、マリーは別よ? 何だかんだでお人好しだし、責任感強いし――、だから押し潰されそうになって、家出なんて考えたんでしょうね」
……駄目だ、分からない。
春美「結局、マリーの奴は何を望んでいるんだ?」
クラウディア「アタシの口から言う事じゃないわ。そのくらいは自分で考えなさいな」
春美「…………すまん」
クラウディア「でもね、あの子は自分の口からは言えないの。告白されても『はい』とは言えないの。それだけは、分かってあげて」
春美「…………ああ」
だからといって、俺にはどうにも出来ないことだけど。
クラウディア「まあ、どっちにしても、アタシはクリスを応援するわ。もしも、あの二人をくっつけたくないなら――」
春美「いや、別に俺は」
クラウディア「おーっほっほっほっ! このクラウディア様を倒してからにすることね!」
……どうやら、真面目な話は終わりらしい。

マリー・ルーデルといがみ合っているようで、実は、仲が良い。

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マリー「そう言われても、これは友人から貰った大切な服なのでっ!」


マリー「人の嫌がることが大好きなんですよ。例えばですね、嫌って言ってるのに無理矢理水着みたいな魔法服押しつけてきたり…
春美「例の魔法の格好か? お前喜んで着てなかった?」
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マリー「嫌々着てるんです!お誕生日のプレゼントで手作りなんて言われたら使わないわけにはいかないじゃないですかっ!」


マリー「あとクラウディア! これ受け取りなさい!」
クラウディア「え? あ…、ちょっと何よコレ」
無理矢理押しつけるように手渡された小さな箱は――
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マリー「ハンカチ! 初任給だからプレゼント!」

渋々であるが、里村かりんのために一肌脱いでいる。

かりん「ひぐっ、えぐ…っ、嫌いって言われましたぁ…っ」
クラウディア「そりゃまあ、あんだけムード無い言い方してりゃあねぇ…」
かりん「ぐらうでぃあざぁぁぁぁぁんっ!!!」
クラウディア「アンタにゃ無理だと思うから、諦めたら?」
かりん「ふぇ…、えぐ…っ、ひゅぅ……っ」
クラウディア「ちょ、ちょっと何よその溜めは?」
かりん「うあああああああああーーーーーーーーーーんっ!!!」
クラウディア「あ、こらっ! この子なんちゅう大声で泣くのよっ!?」
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かりん「言ったのにぃっ、手伝ってくれるって、言ったのに…っ! びえええええええーーーーっ!!!」
クラウディア「ちょっとちょっとぉ! これじゃアタシが泣かしてるみたいじゃない!? お願いだから泣き止んでってば! 何とかしてあげるから!」
かりん「ほ、ホントに…っ?」
クラウディア「お、おほほほほ…、このアタシに任せなさい…?」
かりん「うんっ! ボク、頑張るからっ!」
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クラウディア「このアタシともあろうものが…、泣く子には勝てない…、周りの視線が痛いなんて…!」

ただし、実験に利用するのであるけど。

クラウディア「さあ、この薬を使って実験結果――じゃなくて、ハルミと二人で恋人同士になってご覧なさいっ!」
クリス「あの、今ちらっと本音が――」

マリー・ルーデルが綾瀬春美を助けに来たことがあったが、綾瀬春美は予告なしに突然やってきたのに、村から離れた人気のない場所にマリー・ルーデルが都合良く助けに来るのは不自然ではないか。

クリス「あの後すぐ、マリーお姉ちゃんが来てくれて、」
春美「マリーが?」
マリー「そ、その話はちょっと…」
クラウディア「この子が泣いて頼まなかったら、どうなっていたことやら」

駆けつけることができた事情は一切語られていないが、事前に綾瀬春美の危機を知っていたと考えるのが妥当だろう。 だとすると、その情報源は消去法で1人しか居ない。 企みが長老にバレたので、長老に寝返ったフリをしつつ、マリーにも情報をリークしたのではないか。

マリー・ルーデル攻略ルートの最後には、あんなに恐れていた長老にも戦いを挑んでいる。

長老「やめんかクラウディア! 気でも狂いおったか!?」
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クラウディア「そんなの、とっくの昔に狂ってますことよ♪」
マリー「な、なに…? この騒ぎって――」
クリス「もちろん、計画通りです♪」

こんなカッコイイ悪の総統=クラウディア・クレメントが攻略できないとは何事か!

綾瀬美咲

ご近所さんから義理の息子まで魅了する魔性の天然女。 一方で、料理人としての能力も高く、親としての仕事もしっかりしている。

美咲「本当はね、あなたがオーナーなのよ。私はただの後見人ってとこ」
春美「……そ、そうなの?」
今明かされる、ちょっとした真実。
美咲「だから『かもめ亭』はあなたのお店。自分の思うとおりにしてもいいの」
春美「……母さん」
それはつまり――――
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美咲「頑張ってね、三代目さん♪」
春美「あ…、う、うん……」
なんか、他に言葉が出てこなかった。
まさか、こんな簡単に認めて貰えるとは思わなかったから。
美咲「でもね、一つだけ条件があったりして」
春美「じょ、条件…?」
美咲「優佳ちゃんを説得出来たら……ってことで」
春美「……ゆー姉を?」
美咲「どのみち一人じゃ無理でしょ? でもあの子ならお店の経営のこととか大体分かってるし」
美咲「だから……ね? まずは優佳ちゃんに認めてもらいなさいね?」


美咲「春美だけじゃなくて、優佳のサービスもこのお店の目玉だからね♪」
優佳「何を言ってるのよ。アタシは従業員として当然の――」
美咲「唯さんが優佳にお願いしていたから」
優佳「は?」
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美咲「分かっちゃった♪ 優佳がしっかり春美を助けて、だから上手くいっていたんだなぁ〜って」
美咲「うふふふっ、ここはもう春美と優佳のお店ね」

綾瀬美咲ねらいの人は頑張ってバッドエンドを目指せ(笑)!

ルゥリィ

このルートは見せかたが上手。 惚れるまで→ビスマルク編→瑠璃子編と、各々、緻密に計算されたテーマがある。

ルゥリィ「もうちょっと…、続けて」
ころころと喉を鳴らすような、甘えた声色だった。
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ルゥリィ「ハルミ、上手。気持ちいいから…」
こういうくすぐったい雰囲気は、少し苦手だったけど、


???「ややこしいから、あたしのことはちゃんと瑠璃子って呼んで」
???「そんでもって、こいつはルゥリィ! クロは止めた!」
???「あらあら、ふふふふっ」
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???「分かったわね! アナタはルゥリィよ!」


ルゥリィ「本当は…、少し戸惑ってる」
春美「戸惑うって、何を」
ルゥリィ「ワタシ、猫だから」
ルゥリィ「そ、その…、しちゃった、けど…」
ルゥリィ「分かってたけど…いいのかな…って」
それは、まあ――
ルゥリィ「猫と,人間で……」
春美「恋人なんておかしい、か?」
ルゥリィ「ワタシ、人間になるつもりはない」
ルゥリィ「だから、ハルミは猫が嫌い…なのに」


春美「もしかして、こんな時間までうろついていたのは…」
ルゥリィ「飼い主、探してた」
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ルゥリィ「でも、まだ子供だから…、何言ってるのか分からなくて」


ルゥリィ「あの子、たぶん……捨てられた」
春美「…………そうか」
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ルゥリィ「人間なんて、大嫌い」
春美「……………………」
『人間』の一人として、何も言えなくなってしまう。
ルゥリィ「ねぇ…、ハルミは、知ってる?」


春美「単なる迷子だったんだ」
春美「コイツは、捨て猫とかじゃなかった」
ルゥリィ「違うっ!!!!」
かりん「ふぇ、あ、あの、ルゥリィちゃん?」
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ルゥリィ「この子はびすまるく…! ワタシと暮らすの! ワタシがお母さんになってあげるの!」
春美「……ルゥリィ」
静かに窘めるような、そんな口調。
けれどもルゥリィは、いやいやをするように首を振る。
ルゥリィ「渡さない、誰にも渡さないもんっ!」


ルゥリィ「初めてマリーに会ったとき、ワタシ、お腹空いてたからお弁当盗んだの」
春美「野良猫時代の話か?」
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ルゥリィ「マリー、しばらく盗られたのに気付かなくて、おろおろしてた」
春美「……ええと」
マリーらしいと言えばそれまでだが、よくそんな相手を相棒にしようとか考えたな?
ルゥリィ「それで、可哀相だからパン一つだけ返してあげたの」
春美「……へぇ」
単なる猫だった頃から、少し変わり者で、賢くて優しい猫だったのだろう。
ルゥリィ「ワタシ、後悔はしていない。マリーと出会えたのも、幸せだった」
春美「向こうで半泣きの本人に言ってやれよ」
ルゥリィ「……恥ずかしいから」
春美「はは…、しょうがない奴だな」
――しかし、どうしてなのだろう?
ルゥリィは、どうしていきなり、こんな昔話を話し出す気になったんだ?


……答えを、見つけてしまった。
昼間から時折思い出す違和感の、その答え――
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ルゥリィ「ワタシ、ハルミのこと、大好き……」
その言葉に、偽りがないからこそ――
ルゥリィ「それで、いいよね……?」
……これ以上、黙っているわけにはいかなかった。

最後のオチは大方の予想通りかと。

里村かりん

食いしん坊で、恋愛っけゼロで、頭が弱いボクっ娘と言えば王道中の王道。 しかし、敢えて、王道の逆を行く展開。

かりん「何でマリーちゃんとくっついてるの!!!」
マリー「え、ええと…、あの…」
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かりん「むきぃぃぃぃっ!!!! マリーちゃんのバカ!みーくんのオタンコナスぅぅーー−っ!!!!」

主人公より先に恋愛感情を自覚した里村かりんは、周りのアドバイスを聞きつつ、あの手この手で主人公を振り向かせようとするが、ことごとく失敗。 というか、アドバイスの意味を全く分かってないので、空振りばっかり。 そこで、クラウディア・クレメントの魔法の助けを借りて…。

優佳「なにやっとんじゃあああああああっ!!!!」
駆け寄ってきたゆー姉が硬直している俺をかりんから引きはがす。
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優佳「あんたね!!! これって、これって――」


優佳「おいコラ、春美」
春美「え、えっと……」
優佳「何か言い訳はあるかしら?」
春美「…………ありません」
優佳「そう、なら――かりん?」
かりん「あ、あの…………」
優佳「警察に突き出してもいいけど、どうする?」
かりん「ち、違うの…っ! みーくんは悪くないのっ!」


かりん「ボクが…、ボクが…悪いの…、知らなかったから…っ!」
優佳「知らなかったって……何が?」
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かりん「ら、らって…、こんなになるなんて思わなくてっ! ぐす…っ、ごめ…、ごめん、なさい…っ」
優佳「ええと…、何が何だか分からないんだけど…」
マリー「と、とにかく、かりんさん。服を直しましょうね…?」
かりん「ぐす…っ、みーくん、悪くないの…! ボクが…、ボクが…っ、うぁぁぁぁぁぁぁ…っ!!!」


かりん「……って、あれ?」
春美「……? かりん?」
かりん「あ…、そっか…、だったら別に…」
いきなり独り言を呟いて、一人で勝手に納得してやがる。
春美「あのぉ…、いきなりどうしました?」
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かりん「あのね、あのねっ! 考えてみたら、ごはんがいつも通り美味しかったの!」
春美「はあ……???」
いきなりの笑顔に、少し戸惑った。
かりん「だからね、いつも通りのみーくんのお料理だった!」
……ええと、コイツ、なに言ってるんだ?
春美「す、すまん、お前の思考回路は謎過ぎるから…、最初から説明してくれるか?」


かりん「そんなの、ずるいよ。どうすればいいの…?」
春美「ど、どうって……」
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かりん「勝手に大人にならないでよ…、ボクのこと、置いていかないで――」


かりん「無理だよぉ…っ! もう無理だって、分かってる!」
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かりん「なのに、何で…っ!? こんなの、我が侭だって、分かってるのに…!」


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かりん「ふふ…、約束、してくれる?」


かりん「い、いきますっ!」
カラン…と、床に何かが転がる音がした。
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春美「んぐ…っ!?」


かりん「半月くらい前は、こうして歩いてるだけで楽しかったのに…、変だよね?」
春美「変って言われても」
かりん「もう、『普通』だと満足出来ないの…」
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かりん「もっとずっと素敵なこと、知ってるから。比べちゃうと…、どうしても…」
かりんの方が、よっぽど難しいことを言ってると思う。
春美「と、とにかく、無理して笑わなくてもいいから」
かりん「……ごめん、なさい」
春美「なんでお前が謝るんだよ…?」
かりん「ぐす…っ、だ、だって…っ」
春美「ちょっ、な、なんで泣くんだ!?」
かりん「だって…、それだと、もう笑えない…っ」
かりん「笑顔じゃないボクなんて…、嫌いでしょ…?」

このシナリオ、実は、エピローグのHシーンのためだけに無理矢理考えたのではないかと。 いや、まあ、面白いから良いんだけど。

綾瀬優佳

義弟大好きの暴力ツンデレ娘。

七年前のあの日だ。
綾瀬のおじさんと、母さんとの結婚式の日。
両家が揃って、教会へ向かう時のこと。
桜吹雪の道だった。
優佳(どうして…)
どうして、こんなことになったのだろう?
優佳(結婚なんて…)
結婚なんて、してほしくない。
優佳(あたしは…、アタシは…)
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姉弟になんてなりたくない――!
いっそ、叫び出してしまいたかった。

お前、どんだけショタなんだよと。

優佳「アタシはねっ! 春美の姉として――」
かりん「心配してたんだよねっ♪」
春美「へ……?」
かりん「あのね、優佳さん、みーくんがなかなか来ないからすっごく心配してたの」
優佳「な、な…っ、わ、わ…っ」
唐突に割り込んできたかりんの台詞に、何やら口をぱくぱくさせて言葉を失っているゆー姉。
春美「そうなん…?」
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優佳「か、かりんっ、アンタ余計なこと言わなくていいからっ」
かりん「えっとね、さっきねぇ、消防車とかパトカーとか、い〜〜っぱい走ってたから。それでね−ー」
優佳「ちょっ、ストップストップ! その先は絶対ダメーッ!」
どうやら、少し遅れたことで余計な心配を掛けてしまったらしい。
そうだよな、実の親が倒れたばかりなんだ。ゆー姉だって心細いに決まってるもんな。
春美「ごめん、ゆー姉。今度から気をつける」
優佳「う〜、あ〜〜、分かればいいのよ、分かれば……」
かりん「さっきの取り乱してる優佳さんね、側で見てるとねっ、ちょっと可愛かった!」


優佳「そうですかぁ? ふふっ、私も頼もしい弟がいてくれて助かります」
……何故か、ゆー姉が妙に嬉しそうな顔をしていた。
江口さん「あらら、また始まった」
春美「始まったって、何がです?」
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江口さん「優佳ちゃんの弟自慢。春美ちゃんを褒めるといつもこうなんだよね〜〜」
優佳「な、なな、何言ってるんですかっ! アタシは別にそんなんじゃ」
江口さん「照れなくてもいいじゃないか〜。優佳ちゃんの弟溺愛はご近所でも評判なんだよ? いやいや、仲良きことは美しき哉〜〜」
優佳「も、もう…っ、からかわないで下さいよぉ」
春美「……当人としては溺愛された記憶が欠片も無いのですが」
優佳「当たり前でしょっ! 根も葉もない噂なんだからっ!」
しかし、どこをどう誤解すればそんな噂が出来上がるのだろう?
江口さん「ククク…、いつ見ても面白い姉弟だねぇ〜〜」


春美「お客様、お味のほうはいかがでしょうか?」
早希「シェフさんの自身の程はどうかしら♪」
春美「今回は自信作です。 早希さんには正直な感想をお願いしたいと思います」
早希「どんな結果でも後悔しない?」
春美「ど、ドンと来い…です」
早希「それじゃ…」
春美「………」
早希「おいしいわよ♪」
春美「ほ、本当ですかっ」
早希「――ワインがね」
春美「全米が泣いたっ!」
早希「あ、膝抱えて泣き出した」
早希「…うーん」
早希「56点」
早希「あ、ゾンビった」
優佳「あのね、早希――」
早希「ソムリエさんや〜、このワインはちょっと料理と合ってないんじゃない?」
優佳「早希が自分で選んだんでしょうが!」
早希「そだっけ?」
優佳「惚けるなっ」
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早希「もぉ〜、優佳ってば♪ 春美くんのことになると直ぐにムキになるんだから☆」
優佳「なってないっっっ」


早希「マリーちゃん、行きなさい! お得意様であるあたしを守るのは従業員の使命よ!」
マリー「うわーん、駄目です〜、かないませんよ〜」
早希「大丈夫♪ 春美くんを奪っちゃうぞって言えば大人しくなるから。 ほら、ためしに言ってみて言ってみて♪」
マリー「は、春美さんを…奪っちゃいます…よ?」
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優佳「奪えばいいだろうがーっ!」
マリー「うわーん、凶暴化しましたー」


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優佳「早希は春美のこと何もわかってな〜い!」
春美「ゆー姉…?」
優佳「ぜんっぜん…わかってなーいっ!」
春美「い、いや、そんなこと無いから」
優佳「はりゅみ」
春美「ん?」
優佳「このりょーりね、とってもね、美味しいよ」
春美「サンキュ、ゆー姉」
優佳「美味しいんだから…」
優佳「Zzz」
酔いが回りに回ったのか、机に突っ伏して静かな寝息を立てはじめるゆー姉。
そんな姉の肩に掛け布を掛ける俺。
春美「美味しい、か」
早希さんの感想に毎回撃沈される俺としては、この一言がとても嬉しくて…
明日も頑張ろうって気になる。


元担任「あ、ああ…、もちろん二人ともだよ。優佳も、仕事ぶりを見せてもらったけど――正直見違えた」
優佳「春美の料理は如何でした?」
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元担任「弟くん想いなところも、相変わらずだね」
優佳「え、ちょ、ちょっと…っ」
早希「筋金入りのブラコンっすから」
優佳「早希まで…! 今はその話関係ないでしょうが!」


特に早希さんには、何と言われるのかを考えると緊張せざるを得ない。
はむっと二人が食べるところをじっと見つめる俺。
さて、採点は如何に。
江口さん「おお、これは美味しいね!」
春美「ほ、本当ですか?」
江口さん「何を疑っているんだい?」
春美「い、いや、何と言うか…」
早希「ま、疑っても仕方ないんだよね」
春美「…えっと」
早希「聞きたい?」
春美「是非」
早希「70点ってところかな」
えっと、つまり…
早希「合格ぅ♪」
春美「マジ…ですか?」
早希「そう言ってるじゃない」
春美「や、やった!」
優佳「良かったわね、春美」
春美「これもゆー姉のおかげだよ!」
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優佳「何を言ってるの。これは春美が出した成果じゃない。胸を張りなさい」
江口さん「ま〜た始まったね〜」
優佳「え?」
早希「優佳の弟くん自慢」
優佳「あ、はは…」
お祝いの席の中、優佳の表情が一瞬引きつる。
…弟、か。
俺は優佳の肩に手を置いて、おふざけ者よろしくとばかりに笑って見せた。
春美「いやぁ、褒めてもらったことなんてないんですけどねぇ」
優佳「な、何を言ってるのよっ」
春美「や、いつも殴るわ蹴るわの暴力――」
優佳「誰が暴力を振るうってぇ!?」
春美「げふん」
優佳「二度と春美を褒めたりするもんですかっ」

このルートだけ過去改変(じゃなくて、封印された記憶?)あり。

嫉妬深く、マリー・ルーデルだけでなく、実母(綾瀬美咲)にまで嫉妬する。 主人公は極度のマザコンなのだが。

春美「よ、よし! 退院祝いをしよう! ぱーっとやるぞ!」
優佳「…う、うん、いいんじゃないかな」
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春美にとって、母さんがどういう存在か――アタシには大体わかっている。
きっと、他の誰よりも特別な人。ずっと前からの憧れで…それは『母親』という以上の…
アタシ…どうして素直に喜んでいないのだろう。


美咲「優佳ちゃん、さっきからご機嫌斜めだし」
母さんのちょっぴり困ったような視線に、自分がしかめつらをしていることに気がついた。
……やだ、アタシ。
距離を置くような自分の立ち位置。そして心の中に残る母さんへのわだかまり。
ひょっとして、アタシは母さんを警戒している?
実の母親なのに?
美咲「もしかして私、何か悪いことしちゃった?」
優佳「な、何を言ってるのよ、もぉ」
美咲「忙しかったなら、春美の手が空いてから来ても良かったのよ?」
優佳「――っ」
母さんの口から『春美』の名前が漏れた途端、胸の奥がざわめいてしまう。
これって…嫉妬?

綾瀬優佳は、一度、初恋を諦めているだけあって、自分に自信が持てない人である。 だから、世間体だとか、何だかんだ理由をつけて逃げてしまう。

優佳「見てみる?」
春美「!?」
優佳「う・そ」
春美「ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
優佳「くすっ、何も走って逃げること無いのに」
春美「………」
優佳「見たいって思うんだ…?」
優佳「や、やだな、今更恥ずかしがってどうすんのよ…あたしは!」
優佳「………」
優佳「あたし、…何慌ててるんだろ」
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優佳「昔も、今からも春美は弟、あたしは姉…じゃない」
優佳「血の繋がらない姉弟…か」
優佳「春美は弟、あたしは姉、春美は弟、あたしは姉」


春美「お金のことなら早希さんに頼んだ」
優佳「!?」
春美「貸してくれるって。流石はお嬢様だよなぁ…、二つ返事でOKしてくれたよ」
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優佳「ちょ…、アンタ何勝手なことしてんのよ!?友達にお金借りたりしたくなかったのよっ!」


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優佳「もしも、お店が潰れたりしたら、また春美がいなくなっちゃうかも…」
優佳「そう思ったら、いても立ってもいられなくて…」
優佳「何でもいいから…やろうって」
優佳「や、やだな、アタシ何言ってるんだろう」


優佳「そうよ、アタシは姉になったのっ!」
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優佳「血は繋がっていなくても、二人は姉弟なのよっ!」
春美「ゆ…姉?」
優佳「姉姉姉姉姉!」
優佳「アタシ達は恋人でも何でもないっっっ」
春美「でも、俺は好きって―」
優佳「アタシ、あんたのことなんて好きでも何でもない!」
春美「―え?」
優佳「出てって!」
優佳「出てけえっっっ!」


優佳「どう見てもお似合いじゃないですか!」
高橋さん「そうは思えないんだけど…」
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優佳「じゃあ、どこに問題があるって言うんですか、そもそもどうして好きって言わないんですか」
高橋さん「お、俺は言いたいんだけど唯さんが…」
優佳「言ってもいいなら言いなさいよ!」
怒号…というよりも、それは寧ろ叫びに近かった。
何故だろう?
彼女の言葉が、まるで泣いているように思えて仕方がない。
多分、きっと…
俺は彼女の横顔を見ながら思う。
高橋さんの境遇に、何かを重ねて見ているのではないか?


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優佳「アタシに近寄らないで、放っておいてっ!」
春美「…優佳」
優佳「どうせ料理も出来ない! こんなのを横においておきたくないでしょうしっ!」


絶対、絶対に知られちゃいけなかったのに…!
優佳「そ、そんなわけないでしょっ!? 見間違いよ!」
美咲「え? あの」
優佳「や、やぁねぇ…常識で考えれば――」
自分の迂闊さに、泣き出したくなってしまう。
美咲「春美と…何かあった?」
優佳「――――」
再び頭が真っ白になってしまう。
冷や汗が背中を伝い、全身を強張らせる。
母さん…ひょっとして…全部知ってる?
美咲「あのね、優佳――」
優佳「か、仮にそんなことがあったとしても! 悪いのはあたしだから…! 春美は悪くない!」
美咲「優佳…?」
優佳「だ、大丈夫よ。そもそも何もなかったし… 当然でしょ? あたしと春美は、姉弟でそんな」
美咲「………」
優佳「何も…ないから、これからも」
美咲「……そ、そう」
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優佳「あ、アタシ…今日は…寝るから!」
美咲「あ、あの、優佳ちゃん!?」
やだ、どうして逃げているんだろう、アタシ。
いつかはこうなるって、分かっていた筈なのに。


優佳「別に何もないし…、これからも何もあるわけないし…」
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早希「つまり、なかったことにしたい?」
優佳「だから何もしてないってば そんなことする訳無いでしょ!」
早希「言ってみただけなのにムキになって否定、ね。なぁ〜んだ、やっぱり悩みは春美くんのことか」
優佳「う、うぐ…!?」
早希「カマかけちゃった♪」


あたし…羨ましいんだ。
こんな簡単なことが考えなきゃ分からない。
決して手が届かない場所。どんだけ望んだって、憧れるしか出来ない世界。
早希は『あんな事』を言っていたけれど…
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やっぱりアタシには無理だと思う。だから、こんなにも羨ましくて…妬ましいんだ。

このシナリオだけ魔法の出番がないように見えて、最後にはとっておきの魔法が用意されている。

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優佳「貴女、何を言って…それにその姿」
マリー「くすっ、優佳さんの服装も可愛いですよ」

さて、マリー・ルーデルはどのような魔法を掛けるのか?

マリー・ルーデル

マリー・ルーデルの抱える問題は、自分の道を自分で切り開けないことにある。 家出も自分の意思で行なっているようでいて、それでどうしたいのかという確固たる意思はない。 祖母に人生を決められるのが嫌で反抗しながら、自分では人生を決められない。

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マリー「私が好きなのは、クリスです…。春美さんじゃ……ありません…」
だったら、その涙は何なんだ?
マリー「お気持ち…嬉しいですけど、お断り、します」
一語一語を区切るような、その言葉。


今も、激しく高鳴り続ける心臓の音。
マリー「止まらないよ…、胸…苦しいよ…っ」
わたし――、私は――
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マリー「嬉しかった…、嬉しかったのに…っ」


コイツに、自分を閉じ込める檻を壊せないのなら。
俺が無理矢理にでも、盗み出してやる。
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マリー「く、くりす…、見てる…のに……」
春美「見せてるんだよ。……おいクリス」
クリス「は、はい…っ」
春美「コイツは、俺のだからな」
クリス「ふふっ…っ、どうぞ、なんて言いませんよ?」
春美「勝手に貰っていく。返して欲しければ俺を倒して取り消すことだな」
クリス「もうこっちが倒されてます。春美さんの気持ちの方が……ずっと強いですし」
春美「いいか? 悪いのは――俺だからな?」
マリー「あの、そんな…、勝手に………」

主人公が強引に恋人にすることで、一見、円満解決したように見える。 しかし、マリー・ルーデル自身は何も変わっていない。 そのため、その後の展開は、必然的なものと言える。 主人公の怪我と魔法の問題がなくても、いずれ、同様の問題は起きていたはずなのである。

マリー「もう、私がいなくても平気だと思います…」
春美「ちょ、ちょっと待てよ! おい! 困るって!」
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マリー「お店のことなら…、美咲さんが戻ってくれば大丈夫…ですよねっ?」
春美「店のことじゃねえよ! お前はそれでいいのかよ!?」


マリー「私…、最低の女です…。愛想尽かされても…、しょうがないです…」
春美「何言ってるんだよ、お前」
マリー「私には、人を好きになる資格なんて無かった…。最初から、あなたに相応しくなんかなかった…」
春美「お、おい…、マリー?」
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マリー「や、やっぱり…っ、こんな莫迦な女のことなんて、忘れて下さい…!」
極端から極端へ走る女。マリーはそういう奴だと、俺は知っていた筈だった。

この根が深い問題を解決する唯一の方法は、マリー・ルーデル自身が、自分の意思で道を切り開こうとするようにお膳立てをする事である。 そして、その手段として、主人公は…。

意図をくみ取ろうとしても、それが出来るのは一人だけ。
俺からのメッセージを、受け取ることが出来るのは――
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マリー「卑怯です…っ!」
ガタンと音を立て、マリーが椅子から立ち上がる。


クラウディア「にしても、回りくどいわねぇ…、そういうの、口で言えば済むでしょうに」
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マリー「……言われても、信じなかったと思う」
だって、私は……どうしようもない女で
……自分のことが、大嫌いだったから。


春美「マリーが自分で決めないと、意味がないんだ」
クリス「もう、気持ちは決まり切ってると思いますけど…」
春美「俺を好きかどうかって話じゃない。自分の立場から逃避しても、アイツはこれからもずっと悩み続けることになる」
クリス「よく分からないですけど…、じゃあ、どうするつもりなんですか?」

この会心の一撃には脱帽。

*1 大きさの他、速度が遅いのもレーダーに映りにくい原因となる