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【18禁】群青の空を越えて

総評

一言で言えば、ありとあらゆる設定が荒唐無稽で展開が陳腐すぎる。 これは、戦時中のリアルな人間ドラマなどではない。 他力本願な人たちが、短絡的に無用な暴力に走り、自分の言動を棚に上げて不平不満を言い、その責任を押し付け合うという、醜くて荒唐無稽な笑えない喜劇である。 その他、演出も稚拙な部分が多い。

荒唐無稽な設定類

専門的な内容が荒唐無稽な点については、作り話だからある程度は許容すべきなのだろう。 しかし、基本的な人間描写ですら荒唐無稽なので、とても見られたものではない。 この作品の荒唐無稽さは、極一部に止まらず、骨組から肉付けまでのあらゆる部分全体に及んでいる。 物語の背景や展開は、荒唐無稽すぎてまるで説得力がない。 シリアスな物語のはずなのに、登場人物たちの行動原理も支離滅裂すぎて、笑えないギャグにしかなっていない。 例えば、学生たちが自らの意志で志願する動機が支離滅裂で全く一貫性が見られない。

  • 「一部の占領部隊がおこなった」「実力行使を伴う強硬措置」により「不自由かつ理不尽な生活環境に追い込まれた」ことに対する反発*1
  • 「萩野憲二氏を尊敬」して「その意見が正しいと判断して、自分の意志で戦ってる」*2
  • 「その理想が歪められているのは事実」だと知っていて「今の関東の正義なんて認めちゃいない」*3

この3つの動機は全く違うものであり、とくに後者2つはお互いに相容れない考えである。 この3つが同じ人間の主張であるなら呆れるより他ない*4。 真の理想が何であるのか、そのために何をすべきかをキチンと考えていれば、このような支離滅裂な言動はあり得ない。 では、何故、支離滅裂になるかと言えば、作者が現実の理を何も分かっていないからであろう。 そして、何も分かっていないのに、社会が悪いとか、政府が悪いとか、反抗心だけは一人前なのである。 ようするに、この物語に登場する学生たちは、「憲二の理想論」や「強権的な統治」をする「一部の占領部隊」や「利権屋」や「経済的に追いつめられていたEUの資本家」や「米国の覇権主義」に振り回された可哀想な犠牲者という構図なのである。 しかし、作者が社会の仕組みを全く理解していないから、その構図に持っていくための説得力のある設定や描写が全くできない。 その結果、学生たちは、どう見ても可哀想な犠牲者になどなっていない。 彼らは、明らかに、自らの意志で「憲二の理想論」を支持し、かつ、自らの意思で「利権屋」の行動に加担している。 可哀想な犠牲者に仕立てるはずの登場人物が可哀想な犠牲者になっていないから、言動が支離滅裂になっているのであろう

物語終盤の大人が負うべき責任を子供に負わせる展開には、流石に開いた口が塞がらない。 というか、どういう設定でそんな展開になるのか意味不明なので、物語概略設定資料で再確認する必要が生じる。

設定を確認すると、プレイした印象以上に荒唐無稽で陳腐であることが良くわかる。 企画段階でかなりの無理があり、その無理を何とかするだけの知識も構想もないまま、妄想的アイデアだけを積み重ねた結果、荒唐無稽で陳腐な作品になってしまったのだろう。 しかも、断片的な知識をひけらかしてるだけとしか言いようがない、極細かい部分に妙に凝った部分がある*5ため、奇妙さが余計に際立っている。

  • 「円経済圏理論」という妄想理論の中身が荒唐無稽
    • 「日本を政治的には分割」する必要性が何ら示されていない
    • 閉鎖的な「経済圏」*6は経済学的には大きな損失にしか産まない
    • 実現するための具体的プランのない絵に描いた餅
    • そのままでは「政治の同意は得られない」のに
    • 何故か、大多数の国民は熱狂的に信仰している
  • 学生たちの支離滅裂な言動
    • 死にたくないと言いながら目的も分からない戦争に自ら進んで志願する学生たち
    • 主人公に至っては「関東の正義なんて認めちゃいない」のに関東に加担
    • 戦争を終わらせるための演説なのに内容にまるで説得力がない
  • 「一部政治家と公共事業業者が関東の経済力の独占」するうえでの「関東の独立」の必要性や有用性が示されていない
    • 「税金で食べている過疎県」を切り捨てようとしているはずなのに「税金で食べている過疎県」の集合体である東北と手を組む謎
    • 一方的な独立宣言がどんな結果を招くのか想像できない関東の「一部政財界」
  • 「関西・西日本を中心に指揮された機動隊・一部自衛隊が関東に進出」を正当化する理由も示されていない
    • 関東は独立を宣言しただけで武力行使をしていない
    • 正当な口実すらない、無関係な一般人まで巻き込む「強権的な統治」
    • そもそも、「一部自衛隊が関東に進出」は指揮権を完全に無視した自衛隊の乗っ取りである
    • にも関わらず、関西に対して何のおとがめもない国連
  • 関西の武力進出に対して関東が武力的に抗戦しなかった理由も示されていない
  • 「強権的な統治」をしながら「内戦への備えのなかった関西系自衛隊勢力」
  • 「自由を制約」された状態で外国から密輸して航空戦力を確保する学生たち
  • 荒唐無稽な内容の関西側の主張とそれを咎めない国連
    • 停戦を受け入れながら「戦争ではなく騒擾犯」と言い張る
    • 「騒擾犯」に「法が要求するよりはるかに猶予をもって」「選択の機会を数多く提供」する関西政府
    • 「元自衛隊員と警察関係者からは、戦犯を出さん腹づもり」の関西政府
  • 「実質的に戦時体制」を長年に維持できた理由が説明されてない
    • 近距離すぎる故に反撃の隙も与えない奇襲が可能なのに、敢えてそれをしない両陣営
    • 相手の奇襲に対して全く備えない両陣営
    • そもそも、「実質的に戦時体制」を継続する理由がない
      • 関東も関西も「円経済圏理論」を支持している
      • 「予備生徒」にとっては関東独立などどうでも良く「強権的な統治」さえなければ武力行使する理由がない
      • 関西政府にとっては関東独立さえ阻止できれば良い
  • 危機意識の欠片もない人々
    • 戦争地域を飛ぶ民間航路
    • 滑走路の上を跨ぐ歩道橋
  • 「微妙に異なる歴史」であるのに、現実の経済や世界情勢と全く異っている
    • この物語でも首都が東京にあったにも関わらず、経済も軍事も関西が実権を掌握していた
    • 「押し寄せる国債の返済を拒否」しても国際的信用を失わない「財政基盤の弱かった関東政府」
    • 共産主義国よりも日本を敵視する米国

学生たちが、強制的に自由を奪われ、自らの生活や信念を守るために止む無く勝ち目のない戦争に志願した結果、戦争の首謀者として責任まで取らされるという理不尽な状況を描きたかったであろうことは良くわかる。 しかし、その設定に説得力を持たせるための背景も展開も全く用意できていない。 強制的に自由を奪われる過程にも無理がある。 命と引き換えにするに値するだけの妥当な目的もなく、目的達成のための他の手段も模索せず、自らの意志で戦争に志願しておきながら、被害者面で不平不満を言う様は、やり場の分からない反抗心を満たすための安易で乱暴な行動でしかない。 彼らが首謀者扱いされる事情も荒唐無稽である。 加えて、関東と関西の戦争、グリペンの導入、劣化左翼的思想等、実現のための具体的方策のないまま思いつきのアイデアをシナリオに組み込むから余計に収取がつかなくなっている。 結局、物語として描けたのは若者特有の青臭くも理不尽な反抗心だけである。 現実に戦争が起きたらこのようになっていたであろうと実感できるような真に迫った心理描写とは真逆であり、いくら何でもコレはないとしか評価しようがない描写にしかなっていない。 現実の理を何らわかっていないくせに世の中が悪いとか、政府が悪いという妄想を主張する人、荒唐無稽な陰謀論が好きな人は高く評価するかもしれない。 しかし、現実をしっかり見据えている人からの評価は期待できない。

原則

微妙に異なる歴史を歩んできた近未来の架空日本。

プロローグ - 製品紹介

「微妙に異なる歴史」であって、大きく異なる歴史ではない。 よって、作品中で言及された相違点、および、それによって影響を受ける範囲を除き、歴史上の重大事実は現実と同じであると解釈できる。

ただこの時代、予備生徒にとってもっとも不幸だったのは、米国・ヨーロッパ共、関東・関西のどちらが勝つにしても日本の国力が適度に疲弊するのはより望ましいという共通認識でした。

設定資料 - 製品紹介


関東自治共和政府の唱えている円経済圏構想は、直接的に米国の権益に深く関与している。それを失うまいと米国の世論が一致するのも、無理はなかった。


美樹「米国が円経済圏絶対阻止で固まっていますので、対抗上、英国を除いたEUは軒並み関東政府支援で足並みを揃えているようです」

【加奈子ルート】


圭子「だから、どうにかして……アメリカに西日本をコントロールさせ、中露とヨーロッパに積極介入させて和平を成立させる……この戦争は結局、犬の喧嘩なんです。バケツの水をかけてくれる大人と、リードを引く飼い主……彼らを呼んでくる以外、無いかと思います」

【圭子ルート】


耕一郎「そうだ。だからこそ米国は円経済圏を絶対に許容しない……アジアと日本が親密な関係になるのを阻害するのは、大戦以降の米国の基本的な対極東ドクトリンだ。安保もその為にこそあった」

先生は、湯飲みを握りしめると、昂る自分を抑制するかのように一息にそれを飲み干す。

耕一郎「まして、世界最大の市場がブロック経済として独立するなど、米国の覇権主義にとっては悪夢でしかない。……だから米国は我々を支援して名目だけでも円経済圏を掲げる関東をたたきつぶした」

残っていた茶はすでにかなり渋くなっていたのだろう。先生は、今度は純粋に苦みで顔をしかめた。

確かに、円経済圏に対する米国の態度は当初から強硬だった。

我々日本政府が、そんな米国の思惑を承知でその手を握った時点で、戦後の混乱と米国の介入はすでに約束されていたのかもしれない。

耕一郎「アラブ・ヨーロッパがすでにブロック化し、アフリカが混迷を続ける今、アジアは米国にとって最後の希望だ。関東に勝利後、米国は再占領も辞さぬ覚悟で我々に迫るだろう。……アジア共同体の夢を諦め、友邦日本を復活させるようにな」

貴子「……だからこそ、米国へ対抗し、そのプレゼンスを妨げる為に、EUも早急に戦力を極東へ展開しようとしている。中露だけではパワーゲームの駒が足りないから、ですね」

【最終ルート】

これでは、現実との差異が「微妙」どころでは済まない。

これらの会話現実
「米国・ヨーロッパ共」「日本の国力が適度に疲弊するのはより望ましいという共通認識」日本の軍事力低下は、共産国の台頭につながるので、欧米ともに望まない。日本の経済力低下は、欧米の経済力低下につながるので、欧米ともに望まない。
「この戦争」は「犬の喧嘩」莫大な経済損失を産むだけの「犬の喧嘩」は日本では生じ得ない
「アジアと日本が親密な関係になるのを阻害する」のは「大戦以降の米国の基本的な対極東ドクトリン」で「安保もその為にこそあった」アジア各国への共産主義流入を阻害するのが「大戦以降の米国の基本的な対極東ドクトリン」で「安保もその為にこそあった」
「円経済圏構想」により「直接的に」「米国の権益」が失われる「円経済圏構想」が設定通りの内容なら「米国の権益」をどうにかすることは不可能
「我々を支援して名目だけでも円経済圏を掲げる関東をたたきつぶした」米国にとっては共産国の台頭が最悪のシナリオであろうから、同盟国にダメージを与える「我々を支援」などせずに内戦を終了させるよう圧力をかけると予想される
「ヨーロッパがすでにブロック化」EUとして経済統合はしたが、第三国との関税障壁等を設けていない(EUにとって「近未来」に関税障壁等を設けるメリットはない)
「アラブ」が「すでにブロック化」宗派間や民族間の対立が激しく、経済統合すら夢のまた夢
「中露」も「大人」「リードを引く飼い主」の一員日米欧は「中露」をそこまで信用していない
「中露だけではパワーゲームの駒が足りない」欧米諸国は、中露の協力が必要な場合は交渉しても、可能な限り中露を介入させたがらない

この違いが、作者が意図的に設けた「微妙に異なる歴史」であるのか、現実の解釈を誤っているのかは定かではない。 しかし、反米かつ親中露思想や経済に関する知識等を考慮すると、極端な左翼思想が伺える*7。 この物語の設定が荒唐無稽な原因は、作者が現実を無視した極端な左翼思想に偏っているせいかもしれない。

独立機運

現実の歴史上には存在しないある一つの出来事を仮定し、その影響を受けたその後の歴史の変遷を描いていくのが架空戦記が架空たる所以です。 このif点は物語中に描かれなくとも、もっとも重要な設定であるのは間違いありません。

『群青』の場合、このif点は「縄文末期〜弥生前期の気象変動」にあります。


稲作文化は西日本からゆるやかに東日本にももたらされましたが、現実の史実とは異なりそれは文化的な破壊を伴わず、東日本の都市国家は勢力を保ち続けました。 そのため、大和朝廷への貢納はおこなわれず、またより大規模であったにもかかわらずヤマトタケルの九州・関東征服は共に失敗します(実在人物ではありませんが)。 近畿地方の一勢力だった大和朝廷が九州・東日本を植民地化するには、聖徳太子の登場による強力な集権制度の発足まで待たなければならなくなるのです。

もっとも、これにより東日本都市圏の命運はわずか300年ほど伸びたにすぎないのですが、この300年の差により、文字文化の流入が間に合ってしまい大和朝廷が歴史の改変をおこなう余裕がなくなります。 数千年にわたり続いた東日本文化の歴史は書物に記され途切れることなく一部で継承され続け、征服国家としての大和朝廷を否応なく庶民レベルにまで意識させつづける結果になります。

この東日本文化は現実の歴史と同じく、明治政権の廃藩置県(植民地解放)と意識改造によって一端は抹消されるのですが、やがて戦後社会運動が激しくなった70年安保闘争の頃に、再び人々の意識の間に浮上します。

設定資料 - 製品紹介

ようするに、古代には関東と関西が政治的にも独立しており、かつ、文化も違っていたことを示す証拠が後世に残っていた点が「微妙に異なる歴史」ということである。 そのせいで、時々、関東には関西からの独立意識が高まるという設定である。 しかし、これは、次の全てを満足しない限り、荒唐無稽としか言いようがない。

  • 現代の関東の人間の9割以上が100%純血の古代関東人である
  • 現代の関東の文化には関西から流入してきた文化がほぼない
  • 古代から現代まで、関東の独立意識が常に継続して存在し続けた

常識で考えて、古代関東人と古代関西人の両方の血を引く関東の人が関西からの独立意識を持つなどあり得ない。 これは、文化についても同じことが言える。 また、支配され、かつ、虐げられ続けるからこそ独立意識を維持し続けられるのであり、「一端は抹消」された後に民族の総意としての独立意識が復活することはあり得ない。 だから、古代から現代まで、常に関西が関東を支配し、関東人が虐げられ続けてきたなら、独立意識の高さを説明できる。 しかし、作品中の描写を見る限り、独立前の首都が東京であることは明らかであり、関東人が支配される側ではないことは明らかだろう。

また、宗教対立については言及されていない。

以上踏まえると、「現実の歴史上には存在しないある一つの出来事」は、独立意識の高さを説明するために持ち出されているが、独立意識の高さの説明に全くなっていないことが明らかである。

円経済圏理論

『群青』の舞台中、関東と関西が争う理由になるのが、この主人公の父親(萩野憲二)が提唱した「円経済圏理論」です。

この理論の基本は、社会には、経済圏、軍事圏、民族圏(言語)、政治圏(司法含む)、の四つが存在し、歴史上ではそれらが一致する時期としない時期が交互に訪れる、というものです。

この四つがほぼ一致した場合、近代史上の国家と呼ばれる存在になり(民族圏が一番微妙)。

設定資料 - 製品紹介

次の通り、「経済圏」と「民族圏(言語)」は国家とは無関係であるし、「軍事圏」と「政治圏」は定義が循環論証になっている。

  • 世界的に見れば、一つの国家の中に複数の「民族圏(言語)」が存在したり、単一の「民族圏(言語)」の中に国境が存在することは珍しくない(「一番微妙」なのではなく、国家の境界とは関係がない)
  • 「経済圏」がどの範囲を指すのか不明確(いずれにしろ、国家の境界とは関係がない)
    • 関税障壁等がほぼ完全に0の範囲
    • 関税障壁等が極めて小さい範囲
    • 関税障壁等は小さくないが流通がある範囲
  • 「軍事圏」が1国の軍隊のみを指すのか、軍事同盟を指すのか不明確(「軍事圏」の定義の中に国家が含まれるので、「軍事圏」で国家を定義すると循環論証となる)
  • 「政治圏」が中央政府の政治範囲のみを指すのか、地方自治を指すのか不明確(「政治圏」の定義の中に国家が含まれるので、「政治圏」で国家を定義すると循環論証となる)

よって、それらの4つで国家を定義するのは無理があろう。

日本では明治維新以降の歴史を指します。

設定資料 - 製品紹介

「日本では明治維新以降の歴史」で「この四つがほぼ一致」はこの物語の設定と矛盾する。

  • 関西と関西が違う民族であるなら、少なくとも、明治維新以降は「民族圏」とその他が一致しない
  • この物語の設定では明治維新以前の「軍事圏」と「政治圏」の不一致が示されていない

このズレが生じるのは、技術発展の度合いなどにより、各圏の拡張速度が異なるためであり、また大きいほど効率的(経済・軍事)、技術が許せば多層的で単位が小さいほど効率的(政治)、大きさが人為的には変更不可(民族)と、それぞれの性質が違うからでもあります。


萩野憲二は、上記の理屈に基づき、日本も再び各階層を切り離すべきだ、と日本政府の諮問委員会で答申しました。

EU・NATOの成立・拡大などは、近未来の各圏の不一致の先駆けと考え、国際競争力を維持する為に極東アジアにも同様のシステムが必要だと憲二は考えたからです。 これが、政治単位を小さく分け、逆に経済単位を大きくしようとする円経済圏構想(旧来のブロック化経済とは微妙に異なる)です。

設定資料 - 製品紹介

「政治単位を小さく分け」と「経済単位を大きく」は、「それぞれの性質が違う」ものであれば、それらを関連づけて検討しなければならない理由が全く示されてない。 「EU・NATOの成立・拡大」の例では、「政治単位を小さく分け」るべきことは示されて居ない。

  • EUは「経済圏」を拡大しているとしても、「政治圏」を縮小していない
  • NATOは「軍事圏」を拡大しているとしても、「政治圏」を縮小していない

主人公の父親、萩野憲二は政治・経済的に閉塞感漂う中、新時代の社会モデルとして、日本を政治的には分割し、経済的には逆に極東アジア全体を統合する『円経済圏構想』を提唱する。

折からの地方分権熱と、変革に伴う経済効果を期待する勢力にも押され、議論のすえこの提案は受け入れられる。 ほどなく各地域に広域行政府が発足。 プロローグ - 製品紹介


これが、政治単位を小さく分け、逆に経済単位を大きくしようとする円経済圏構想(旧来のブロック化経済とは微妙に異なる)です。


彼の提案では、日本と同様に分割した中国(六つに分割)、朝鮮半島(新羅・百済・高句麗に分割)、台湾、などで共通通貨をもちヨーロッパや北米(アメリカ)に対抗する予定でした。

――その提案は、日本の発展的な分割案として一度は国会で承認されます。

設定資料 - 製品紹介

「経済的には逆に極東アジア全体を統合する」「経済単位を大きく」が「円経済圏」内での流通の自由化促進を意味するなら、それ自体は「変革に伴う経済効果」を期待できよう。 しかし、「日本を政治的には分割」「政治単位を小さく分け」には何のメリットも示されていない。 「技術が許せば多層的で単位が小さいほど効率的」とは、単に地方分権に適用できる話であり、「日本を政治的には分割」「政治単位を小さく分け」る理由にはならない。 そもそも、「技術が許せば」であるなら、「政治単位」は技術の進歩の度合いに応じた最適化を考慮すべきものであり、「変革に伴う経済効果」とは関係ない。 流通の自由化促進は、国の主要制度を全く変えることなく実現できることである。 逆に、「日本を政治的には分割」「政治単位を小さく分け」は、国の主要制度を大きく変えることを意味する。 であれば、「日本の発展的な分割案」は、国の主要制度を全く変えることなく実現できることのために、国の主要制度を大きく変えようとするものである。 こんな意味不明な法案が「国会で承認」されるなど、常識で考えればあり得ない。

独立の目的

だが、新制度発足後間もなく、関東圏行政府は突然、これは旧来と同様の国家単位だとして独立を宣言する(直前に、萩野憲二は暗殺される)。

関東の独立は、経済利益を目的とした一部政財界の私欲に満ちたものだったからである。

プロローグ - 製品紹介


ですが、その後関東の政治的独立は強硬に旧来型国家としての独立にすり替えられ、これに反対した憲二はあっさり暗殺されます。

設定資料 - 製品紹介

萩野憲二を暗殺してまで独立を強行しなければならなかった理由が示されていない。

それは地方を切り捨て、より経済的な利益を得るために、日本という枠組みの遺産は不要と判断したからだった。 また、活動家の一部は学生運動の流れの一部を引いていたから、というのもあった。

【共通ルート】


美樹「……東北は、相変わらずですが」

−−本当なら……

難民受け入れを、蝦夷に打診する必要などない筈だった。 東北六県は、関東自治共和政府に対して建前では参加を申し出ている。 そして難民受け入れ余地も充分あった。

だが、実際には彼らは関東自治共和政府からは大きく一歩距離をおき、中立状態に近かった。

【若葉ルート】


社「関東が旧来国家の形態で独立すれば、地方にばらまかれていた交付金が不要に無用になる。税金で食べている過疎県を切り捨てれば、東京ではまだ大規模な公共事業が続けられる」

−−そしておそらく親父たちは、そんな事情は百も承知だった。

ガキのような性格のくせに、頭だけはよい人だった。浮世離れした戯言ばかりいい続けながら、他人の思惑を見抜く才能は、天才的だったと聞いた。

社「土建屋は未だ政治力がある。円経済圏を成立させるには、旧来型産業が儲けられる関東という国家が必要だった。そうでなければ、政治の同意は得られない。……確かにそれは、利権屋に都合のいい夢を見させ、政治を押さえ込むためのあくまでの手段だったのだろう」

ずっと、考えていた。

墜落して数週間。何もできず、何も与えられていない状況では、考える以外にすることがなかった。関西側に捕らえられた状況は、冷静に自分たちの置かれた状況を見つめ直すには都合が良かった。

どうして戦争が始まったのか……どうして、戦わなければならないのか。その答えはまだ、見つかっていないけれど。

何故戦争に至ったのか、その経過だけはおぼろげながらも判ってきた。

社「大規模な円経済圏を提唱する一方で、あんたたちはその過程で一時的に旧来国家の関東が成立する可能性を耳打ちし、利権屋にバラ色の夢を見させた。……あげく奴らの暴走をコントロール出来ず、結果として策に溺れた! 違うか! ……俺がどこか間違っているなら、言ってみろ!」

耕一郎「……そうだ。貴様の言うとおりだ。……そして最後まで綺麗事を奴らに主張し続けて、お前の親父さんは殺された」

【最終ルート】

「旧来型産業が儲けられる関東という国家」がなければ「円経済圏」に「政治の同意」が得られないのであれば、どうやって関東以外の「政治の同意」を得たのか。 確かに、「地方にばらまかれていた交付金が不要に無用になる」話をすれば、東京の同意は得られるかもしれない。 しかし、切り捨てられる側の「税金で食べている過疎県」からは、当然、反発を食らうだろう。 他の行政府にとって関東の独立宣言が寝耳に水だったことは、「地方にばらまかれていた交付金が不要に無用になる」話が関東以外には秘密であったのだろう。 では、関東以外の「利権屋」にはどのような「都合のいい夢」を見させたのか。 そんな「都合のいい夢」などなくても「円経済圏」に「政治の同意」が得られるなら、関東でも「都合のいい夢」など必要ないはずである。

そして、関東が独立宣言すれば、「税金で食べている過疎県」は自分たちが切り捨てられることに気づくだろう。 であれば、「税金で食べている過疎県」は関東の独立に反対するはずである。 「税金で食べている過疎県」の集合体である東北は間違いなく関東の独立に反対する。 それならば、「税金で食べている過疎県」の集合体である東北が関東と組むのはおかしい。 東北を仲間に引き入れるために「地方にばらまかれていた交付金」を引き換えにするのであれば、関東にとっての「都合のいい夢」が手に入らなくなるので、関東が独立する意味がなくなる。

管制官「分割というのは、どこまで、何を分割するのか……地方は東京一極集中を是正し権益を奪い返せると思い、東京は地方に補助金をまかなくてよくなると思った。そもそも、同床異夢だったんだな。……そこに若い者が火種を放り込んで、戦争だ」

【最終ルート】

「日本を政治的には分割」「政治単位を小さく分け」は、予算の独立も含むと解釈すれば、「東京は地方に補助金をまかなくてよくなる」ことを意味する。 しかし、「日本を政治的には分割」「政治単位を小さく分け」だけでは、地方が東京から「権益を奪い返せる」ことにはならない。 地方が東京から「権益を奪い返せる」ためには、東京が独占している権益を取り上げて地方に再分配する中央集権的政策が必要になる。 基本方針と逆行する中央集権的再分配政策が附則として存在するなら、当然、「国会で承認」の前に審議されているはずであろう。 中央集権的再分配政策が明示されていなければ地方が反発するし、中央集権的再分配政策が明示されていれば東京が反発する。 そのような「同床異夢」では「国会で承認」などできるはずがない。

自衛隊等の組織系統

利己的な独立を許すくらいなら、旧日本を維持すべきと関西・西日本を中心に指揮された機動隊・一部自衛隊が関東に進出。 独立を阻止しようと、強権的な統治を開始する。

プロローグ - 製品紹介


独立は鎮圧されますが、その過程で様々な問題を引き起こします。

それは主に、実力行使を伴う強硬措置を一部の占領部隊がおこなったからでした。

設定資料 - 製品紹介

「日本を政治的には分割」した結果、自衛隊の指揮権は何処に帰属したのか。 警察は元より地方毎の組織であるので、ここでは自衛隊がどうなっていたかが問題となる。 「関東圏行政府」が独立を宣言した際、自衛隊が中央政府の指揮下にあったなら、一部の行政府が勝手に動かすことはできないはずである。 その状態で首都機能が東京にあったなら、「関東圏行政府」が中央政府を実質的に支配していることになる。 にも関わらず、関西にある自衛隊が関西の行政府の指示に従ったなら、中央政府に対する反逆行為に該当する。 次のように正当性を主張できる手続きで代理政府を擁立したうえで、そのメンバーとして権限のある者が自衛隊を指揮しなければ、どんな言い訳をしようとも、反逆行為であることを免れようはない。

  • 国の正式な組織であるはずの中央政府を否定する以上、国連常任理事会の決議等の後押しが必要
  • そのために、中央政府が乗っ取られていることを示す明確な証拠が必要
  • 中央政府の代理である以上、関東の国民を排除した手続きは認められる余地がない

関西の行政府が関西にある自衛隊を正当な権限の元に動かせるとすれば、事前に、自衛隊が各行政府単位に分割されているはずである。 であれば、当然、関東の自衛隊は「関東圏行政府」の指揮下にあるはずである。 その状況で、関西の行政府が関西にある機動隊や自衛隊を動かして「関東圏行政府」に武力介入しようとすれば、「関東圏行政府」も関東にある機動隊や自衛隊を動かして抗戦するはずであろう。

仮に、関西にある自衛隊が中央政府に反逆行為を働いたとしても、関西の行政府が関東にある自衛隊組織を唆かすことは難しい。 であれば、当然、関東にある自衛隊は、中央政府の指揮に従って、関西にある自衛隊の反逆行為の鎮圧に動くはずである。

それとも、関西にある機動隊や自衛隊は、隠密行動に徹して、「関東圏行政府」に全く気づかれることなく、「関東圏行政府」を制圧してしまったのだろうか。 であれば、「強権的な統治」などしなくても、その時の「関東圏行政府」のメンバーを拘束してしまえば事足りる。 また、その時点で関西の行政府の勝利は確定しているのであり、後から「レジスタンス運動を開始」しても手遅れである。

開戦準備

これに対し、自由を制約された学生が反発。 予備生徒制度を発足させ、レジスタンス運動を開始する。 東アジア団結を夢想する活動家の扇動、EU型大規模経済圏の成立を望む欧州の密かな軍事支援などもあり、その組織は急速に拡大した。

主に学校単位で編成された予備生徒はやがて、武装蜂起して第一次独立闘争を開始する。 内戦への備えのなかった関西系自衛隊勢力は不意をつかれ敗走。

関東は独立状態を回復する。

プロローグ - 製品紹介


不自由かつ理不尽な生活環境に追い込まれた関東で、憲二の理想論に感化された学生を中心に抵抗運動が始まります。 これは学校の部活・委員会単位で急速に組織化され、最後は統一した武装蜂起へと発展します。

そうして、学生が抵抗運動をおこなうシステムとして、予備生徒制度が発足します。

設定資料 - 製品紹介

「実力行使を伴う強硬措置を一部の占領部隊がおこなっ」っている「強権的な統治」下で「自由を制約された学生」達はどうやって開戦の準備を整えたのか。

美樹「私が、諒を守れなかったから。……私があの時、最初の一発を撃ちさえしなければ、少なくともあの瞬間に戦争は始まらず、諒は戦死しなかった」

なんと、驚くべきことに、「自由を制約された学生」たちは、「武装蜂起して第一次独立闘争を開始」する段階で、既に、航空戦力を確保していたのである。 しかも、「強権的な統治」をする「一部の占領部隊」に見つからないよう、海外製の戦闘機を密輸し*8、整備施設や離発着施設を密かに確保し、複雑な挙動も含めたパイロットの訓練を秘密の施設で行い*9、「武装蜂起して第一次独立闘争を開始」する前に実戦配備したのである。 常識で考えて、「自由を制約された」状態では正規の軍隊やテロリストですら困難であろうし、「自由を制約」されてなくても学生には困難であろう。 それを「自由を制約された学生」が実現したのにはどのようなカラクリがあるのか(笑)。

関東政府(関東自治共和政府)を支持する学生が志願して戦闘参加するシステムが予備生徒制度です。 その上部組織にあたる関東軍(正式名称は関東自治共和政府治安維持軍)は主に元自衛隊員と元予備生徒で構成されています。

設定資料 - 製品紹介

「関西・西日本を中心に指揮された機動隊・一部自衛隊」が侵略してきて「強権的な統治」をした際に、関東を防衛しなかった「元自衛隊員」らが、今更どの面下げて「関東軍」に参加しているのであろう。

学生たちの目的

これに対し、自由を制約された学生が反発。 予備生徒制度を発足させ、レジスタンス運動を開始する

プロローグ - 製品紹介


独立は鎮圧されますが、その過程で様々な問題を引き起こします。

それは主に、実力行使を伴う強硬措置を一部の占領部隊がおこなったからでした。

不自由かつ理不尽な生活環境に追い込まれた関東で、憲二の理想論に感化された学生を中心に抵抗運動が始まります。 これは学校の部活・委員会単位で急速に組織化され、最後は統一した武装蜂起へと発展します。

そうして、学生が抵抗運動をおこなうシステムとして、予備生徒制度が発足します。

関東政府(関東自治共和政府)を支持する学生が志願して戦闘参加するシステムが予備生徒制度です。

設定資料 - 製品紹介

「一部の占領部隊がおこなった」「実力行使を伴う強硬措置」により「不自由かつ理不尽な生活環境に追い込まれた」せいで、「学校の部活・委員会単位で急速に組織化され、最後は統一した武装蜂起へと発展」することはあり得ないことでない。 そして、彼らの自由を奪った「一部の占領部隊」に敵対する存在として「関東政府(関東自治共和政府)を支持する」ことも自然なことである。

その中には「憲二の理想論に感化された学生」もいたとしてもおかしくはないし、そうした学生が全体を取りまとめるための神輿を担ぐ役を担ったとしても不思議ではない。 しかし、「憲二の理想論」は、実現可能な具体的な方法論がない急進論であり、かつ、生命や生活に直結しない絵空事であるので、一部の急進的思想者でもなければ命をかけるわけがない*10

であれば、関東独立を目指す意味で「関東政府(関東自治共和政府)を支持する」学生が多くいるとは考えにくい。 ましてや、円経済圏構想など、一部の「憲二の理想論に感化された学生」くらいしか見向きもしないはずである。 よって、「予備生徒」の多くが、円経済圏構想が強く支持していたり、萩野憲二を神格化して崇めていることはあり得ない。

若菜「あの子、隠していたかもしれないけど、本当に社のことを……本当に尊敬していたのよ。初めて一緒に飛んだ時から、『あの人がいれば大丈夫だ』って……嬉しそうに何度も何度も言ってた……ウッ……だのに……社と一緒ならって……なのにどうしてこんな、あの子だけ……」

身体を折って、足元に踞る。

若菜「……ゴメン、許して、判ってるのわたしだって……でも……でもね……どうしてなの! ……どうして……社なら、社だけは絶対あの子を助けてくれると、信じてたのに!」

【若菜ルート】


俊治「それに、個人的な希望を言わせてもらえれば……先輩には、もう戻って欲しくないんです。藤川先輩たちはアレでしたし……せめて先輩だけでも」

社「バカヤロウ! 俺だけ、そんな」

俊治「クー先輩たちだって、きっとそのつもりだったと思いますよ。ヘギー先輩だけでも生き残れるなら、自分は、って……お願いです。蝦夷へ行ってもらえませんか?」

社「なっ」

俺は、おもわず絶句した。

俊治「先輩はあの荻野氏の息子だ。政治的にも利用価値があるから、関東政府も蝦夷共和国に亡命を認めるでしょ」


忠則「まったく……その俊治くんが、君たち二人揃って逃げ出せる準備を整えたんだろう? その時にどうして素直に一緒に逃げなかったんだ。そうしていれば、なんの問題もなかったのに」

社「バカヤロー! ……タツやクーの墓前でもう一度言ってみろ、その台詞」

忠則「幾度だって言えるさ。……あいつらだって、それを望んでいた、必ずだ」

"【加奈子ルート】


俊治「姉さん……いったいどうしたんですか? どうも、姉さんの勘が当たりみたいですけど……一緒にお芝居したって、そんな長い期間でもないでしょう? なのにどうして?」

若菜「なに言ってるのよ……萩野くんがどういう人か、わたしに散々語って聞かせたのはあんたじゃない」

【圭子ルート】


俊治「だいたい、先輩が一番それを理解していなかった。僕らがどれだけ、萩野って名前に期待していたか! ……そりゃ、先輩にとっては忌まわしいだけの名前だったろう。でも……命がけで飛んでいる僕らにしてみれば、もしかしたら、って希望を抱ける名前だったんだよ」

【最終ルート】


無論、居なくなる前のヘギーを知っていれば、それはにわかには信じがたいおとぎ話だ。水木さんは関西に行ってどうにかしちまったんじゃないか、もしかしたら捕まって操られてるんじゃないかと、疑いたいほどだ。

あれほどオヤジを嫌っていたヘギーが、萩野憲二の息子として円経済圏の成立を世界に宣言するだなんて……バカな二代目にだけには絶対にならないと事あるたびに繰り返したのに、どういう心境の変化だろうか。

−−なんかあったのかな……それとも、堕ちたのが人生観変えるほどのショックだったのか。

オレにはまったく予想がつかなかった。だが、それでもなお、とヘギーが決心しているなら、……オレは何があっても、手助けしたい。

達也「すでに忠則と加奈子ちゃんが、整備の連中を密かに説得しはじめている。ヘギーの生存はまだ伏せてだけどな。……クーも、できれば協力して欲しいんだ」

【最終ルート】

何故、どいつもこいつも、萩野憲二の息子を神格化しているのか(笑)。

一方、水木若菜は同級生であり、弟の相棒である萩野社に対して、複雑な感情を抱いていた。 それは主にその父親・憲二の存在が理由だった。 両親は憲二に心酔しおり、家庭を顧みない二人に反発する若菜には、逆に印象が悪かったからである。

プロローグ - 製品紹介


若菜「わたしたち、お父様、萩野憲二氏を尊敬しているけど、それだけで命がけで戦っているわけじゃないよ。筑波航空団に居る人たちはみんな、その意見が正しいと判断して、自分の意志で戦ってるんだよ」

【若菜ルート】

萩野憲二に対して悪い印象を持っていた水木若菜まで「萩野憲二氏を尊敬」して「その意見が正しいと判断して、自分の意志で戦ってる」とは(笑)。

達也「お前の親父は、本当は何がしたかったんだ? ………オレは死ぬのが怖い訳じゃない。ただ、それが本当に命をかけるだけの価値があるものなのか、知りたいだけなんだ」

【加奈子ルート】

自らの意志で志願して参戦して居る学生たちが「萩野憲二氏を尊敬」して「その意見が正しいと判断して、自分の意志で戦ってる」なら、「お前の親父は、本当は何がしたかったんだ?」「それが本当に命をかけるだけの価値があるものなのか、知りたい」という疑問が生まれてくるはずもない。

社「今の関東の独立が、利権屋の思惑に踊らされてだとは、戦ってる俺たちだって百も承知だ! だいたい、だったらどうして運動の初期に余計な民族論を持ち出して、関東縄文人のナショナリズムを無用に煽るような真似をした!」


耕一郎「最初の問いに戻ろう。……そこまで理解していながら、貴様がなぜ関東のために戦う?」

社「……だからって……俺が知らんぷりして放り出すわけにはいかないじゃないか」

俺は動揺して、再び床に座り込んだ。

社「理屈も、背景も判ってる。だけど……それでも、親父の唱えた理想を信じて、命がけで戦おうとしている戦友が、まだむこうには沢山居るんだ。……今の関東は、その理想が歪められているのは事実だけど、それは戦いを止める理由にはならない」

−−フィー教官、トシ、タツ、若菜さん……

みんな、今の関東の正義なんて認めちゃいない。でも同時に……その遥かな先にある理想を信じて。戦っている。

社「戦争なんてよくない。みんな判っている。それに誰だって死にたくないさ。……でも、誰かが、今の世界をどうにかしなきゃいけない。見てるだけじゃ、論評しているだけじゃ何も変わらないんだ」

−−クー、加奈子ちゃん、大賀……そして亡くなられた、先輩たち。

社「そして……どんなにくだらない思惑がからんでいようとも、政治と経済と軍事を切り離さなければ、人はこれから先に進めない、って親父の理屈だけは、正しいと思う。……それを成し遂げる為に戦おうとする者が一人でも居るなら、俺がその先頭に立つのは、義務だろう」

【最終ルート】

「その理想が歪められているのは事実」なのに「それは戦いを止める理由にはならない」とは全く意味不明である。 「みんな、今の関東の正義なんて認めちゃいない」なら、当然、理想が「その遥かな先」に存在しないことは明らかであろう。 「その理想が歪められている」状況を修正することなく闇雲に戦っても、永久に理想に到達しないどころか、益々、理想から遠ざかるだけである。 一歩でも理想に近づくことが期待できる行動だからこそ、「誰かが、今の世界をどうにかしなきゃいけない」「見てるだけじゃ、論評しているだけじゃ何も変わらない」が正当化の理由になるのである。 理想に近づかない、むしろ、理想から遠ざかりかねない行動は、そんな言葉では正当化できない。 理想を実現したいなら、戦うべき相手は、「利権屋の思惑」「くだらない思惑」であろう。 しかし、主人公たちは、「利権屋の思惑」「くだらない思惑」と敵対する勢力と戦って、「利権屋の思惑」「くだらない思惑」に加担しているのである。 それでは、明らかに、理想の実現と逆行している。

既に説明済みなので、ここでは、「政治と経済と軍事を切り離さなければ、人はこれから先に進めない、って親父の理屈だけは、正しい」については突っ込まない。 「政治と経済と軍事を切り離さなければ」なら、「円経済圏」を実現すべきとする政治的主張を軍事的手段で押し通そうとするのは明らかに矛盾した行動であろう。

戦後処理

第一、そうなれば停戦監視に来ている国連の暫定駐留部隊が黙ってはいないだろうし、そもそも巡航ミサイルを運用可能な機体は、どちらの部隊も持っていない。


ここ筑波戦闘航空団は実質的に戦時体制にあるとはいえ、建前は停戦中である。


現在、おこなわれている空戦は、停戦監視をしている国連軍の目を盗んでの、双方の示威行動である。


夕紀「だって、本当?……今、停戦中なんでしょ?」

美樹「その停戦を維持するために、我々は関西軍を威嚇し続ける必要があるんです」


社「本栖のむこうくらいだと思います。太平洋側には、国連の停戦監視部隊がいますから。いくら建前でも、彼らの目の前で空戦をするわけにはいかない」


けれど、そうして死亡したパイロットたちが戦死と認定されることはない。関東と西日本は今、停戦中であるという建前があるからだ。

【共通ルート】


けれど、そうまでして戦ってして死亡したパイロットたちが、公式に戦死と認定されることはない。なぜなら、関東と西日本は今、停戦中であるという建前があるからだ。

【美樹ルート】


そして、関西軍は、学生相手に続ける戦争を諸外国から非難されて……停戦がはじまって。

【若菜ルート】

関西政権が停戦合意に応じたことを示す描写は見つけられなかった。 しかし、関西政権が「停戦監視に来ている国連の暫定駐留部隊」を受け入れた事実は確認できる。 また、「停戦監視」に表向きは武力行使を停止している以上、停戦を認めていないという言い訳が成立する余地はない。

俺は、唯一の居場所であるベッドの上から、TVのリモコンを入れた。

アナウンサー『……では、それは間違っていると仰るのですね』

貴子『……このように、これはそもそも戦争ではないんです。いわゆる、内戦ですらありません』

薄暗い部屋に、プラズマ光が陰を作る。

映し出されたのは、どこかの国の通信社の制作した衛星放送だった。

貴子『ですから、皆様には誤解してないでいただきたい。彼らは戦争犯罪人でもなければ、無論、テロリストでもない。……単なる、一犯罪者にすぎないのです。』

−−一条貴子二佐、か。

俺は、映し出された女を知っていた。妙に、見覚えのあるような気にさせる顔立ち。多分、ほとんどの予備生徒が、彼女のことを知っているだろう。

アナウンサー『……と主張していますが、これについて先日のASEAN外相会議では……』

貴子『……ですから、円経済圏構想について萩野氏を指導なさった藤谷教授も指摘しておられるように、経済通貨圏の成立と関東の政治的独立には、そもそも関連性がありません。騒擾犯らは、意図的にその点を曲解しています』

元、航空自衛隊飛行教導隊初の女性パイロット。現、関西軍のエースパイロット。TACネームまで伝わっている。通りがかった船を沈めるローレライの魔女、サイレン。

貴子『通り一遍を学んだだけの私にも判るような理論のすり替えを行なっている彼らに、政治的・社会的正当性など望むべくもない。彼らの主張は、単なる経済的利益を目的としたエゴにすぎません』

【共通ルート】

本当に、戦争でも内戦でもなく、騒擾犯が起こした犯罪行為にすぎないなら、停戦はあり得ない。

国内の犯罪への対処にすぎないなら、「国連の暫定駐留部隊」が「停戦監視に来ている」という名目で派遣されることは、国際法を無視した内政干渉であろう。 であれば、日本政府には、それを拒否する正当な権利がある。 にもかかわらず、「停戦監視に来ている国連の暫定駐留部隊」を受け入れたのであれば、それは、政府として戦争であることを公式に認めたことを意味する。 だったら、「これはそもそも戦争ではないんです。いわゆる、内戦ですらありません」という主張こそが「理論のすり替え」であろう。

貴子『今回の彼らの決定は、極めて残念であり非常に落胆しています。これまで我々は彼らに、選択の機会を数多く提供してきました』

在京キー局の映像であるにも関わらず、そこにあらわれるのは、関西軍の関係者ばかりだった。

貴子『実力行使を伴う強制的な逮捕・拘留は、私達の意図しない不幸な事態を偶発させる可能性があります。このような状況を避けるために、日本政府は最大限の努力を重ねてきました。……それが報われなかったのは、誰にとっても不幸な結果であり、正直落胆しています』

そこに写っているのは、関西軍のエースパイロット、一条貴子だった。

開戦時に、トップエースが呑気にインタビューを受けている余裕があるとは思えない。あらかじめ事前に収録されていたのだろう。

そしてそれを開戦と同時に流すと言う事は……

−−知っていたんだ、奴らは。あらかじめ、このシナリオを。

貴子『関東・関西を問わず、すでに悲劇に見舞われた方々、これから見舞われるであろう方々全てに、我々は深い哀悼の意を表します。しかし、日本政府は法的に正当な勧告を彼らに繰り返し続けてきました。……時には、法が要求するよりはるかに猶予をもって』

アナウンサー『確かに、もはや全ての問題は彼らの側にあると判断せざるを得ない状況ではありますね』

貴子『はい。それらを一切無視し、この結果を彼らは選択した。今後発生する悲しい状況は、間違いなく彼らにその全責任があります』

【加奈子ルート】

本当に、戦争でも内戦でもなく、騒擾犯が起こした犯罪行為であるなら、「法が要求するよりはるかに猶予をもって」「選択の機会を数多く提供」することなどあり得ない。 何故なら、騒擾犯の権利よりも、無関係な第三者の権利を優先することなどあり得ないのだから。

「日本政府」を自称する側が「騒擾犯」として扱う相手は、武装しているのである。 その「騒擾犯」は、携行用の銃火器だけでなく、戦車や戦闘機まで所持している。 武装した騒擾犯であれば、それを「実力行使を伴う強制的な逮捕・拘留」しなければ、第三者を傷つける危険性は極めて大きい。 それは、「実力行使を伴う強制的な逮捕・拘留」が「私達の意図しない不幸な事態を偶発させる可能性」よりも遥かに大きい。 それなのに、無関係な第三者の権利をないがしろにしてまで、「法が要求するよりはるかに猶予をもって」「選択の機会を数多く提供」することなどあり得ない。 つまり、「法が要求するよりはるかに猶予をもって」「選択の機会を数多く提供」してきたことこそが、政府として戦争であることを公式に認めたことを意味するのである。

『……の間で、本日24時、停戦協定が成立しました。……の皆さんは、すみやかに、戦闘を停止し……』

忠則「本日はまだ24時になってないよ。だいたい、治安維持行為なのにどうして停戦なのだろうね」

土手の脇に生えた草むらにしゃがみ込み、あたりを警戒しながら、大賀先輩が毒気づく。

真っ暗な闇の向こうには、明かり一つ見えなかった。敵はまだ、相当遠くに居るようだ。

忠則「大義名分で押し通すなら、最後まで徹底して欲しいよ」

【加奈子ルート】

大賀忠則のツッコミが的確すぎて笑えない。

最後の戦いを終え……

死を覚悟して投稿した俺を待っていたのは……長く、けれども茶番でしかない裁判だった。

あの日の、フィー教官の呟きは真実だった。

彼らは、徹頭徹尾、俺たちを単なる刑事犯として扱った。

予備生徒は、その大半が家裁送りになり、そのほぼ全員が保護観察処分になった。 元予備生徒の正規士官も大半が略式起訴による罰金刑か、嫌疑不十分なので不起訴処分とされ、ほとんど厳しい罰を受けなかった。

それはあまりに極端な処理すぎて、関西軍の遺族の一部からは厳しい非難もあがった。 当然だ。 俺たちは銃を手に人を撃った、人殺しなのだから。

だが、……その非難の声は黙殺され、すぐに消えた。

その理由にはおそらく、厳密に法を適用すれば、処罰の対象となる人数が増えすぎ、処理が難しいと言う現実的な判断もあったろう。

国土復興に多額の予算が必要な時期に、十数万人もの囚人を抱え込む余裕などどこにもなかった筈だ。

そしてないより、全国の大半の人々が、親類や知り合いの中に一人や二人は、予備生徒や関係者を抱えていた。 厳罰を望む声は、決して世論の主流にはならなかった。

結局、実質的な責任はごく一部の上層部に押しつけられた。 実際に手を汚した大多数を、被害者扱いにしてしまう処理方法は、二次大戦の時と同様だった。

−−フィー教官……

俺は、無論望んで責任者たらんとした。法廷で、主張したい意見もあった。

何より、それはフィー教官との、誓約だったから。

だが……その指導者に対する裁判ですら、彼らのやり口は徹底していた。

俺は改めて航空法違反、銃刀法違反、−−殺人は自白だけでは証拠不十分であるとして不起訴扱いにされた−−その他の微罪でのみ起訴された。その裁判の内容はまったく報道されなかったし、世間の耳目も集めなかった。 ……意図的に無視された、といってもいい。

それが、彼らの復習だった。

航空団司令ですら、破防法は適用されずただの凶器武器準備集合罪でしかないのだから、まるで子供の喧嘩扱いだ。 もっとも、皆、微罪を山のように積み重ねられ、懲役年数だけは長かったが。

……軽犯罪者の集団でしかないのだから、無論歴史上に記録すべき出来事でもなく、ただの大規模な家出騒ぎのようのなもので。

そうして、今、

関東独立運動など、はじめからどこにも無かったかのように……全てが社会の中から、抹殺されようとしていた。

【若菜ルート】

「実際に手を汚した大多数を、被害者扱いにしてしまう処理方法は、二次大戦の時と同様」とは、「微妙に異なる歴史」だからなのか。 それとも、作者の歴史認識が誤っているのか。 史実では、「人道に対する罪」に該当すれば「実際に手を汚した」容疑であっても「被害者扱い」にされずに起訴されている。 例えば、東京俘虜収容所の警備員なども起訴されている*11

「軽犯罪者の集団」に仕立て上げたとしても、人が多数死んでいる以上、「無論歴史上に記録すべき出来事」になることは避けられないし、「全てが社会の中から、抹殺」することは不可能だろう。 停戦中の死者は存在しないことにされているとしても、第一次独立闘争と最終決戦での死者は誤魔化しようがない。

今回の大統領選挙は、近年では過去に例のないほど地味な選挙戦になっていた。ほとんど、争点らしい争点がない。

アメリカは多様な人種と宗教、価値観が入り組んだ階層社会だ。大統領選挙は、その対立が大きく現れる。……平時であれば。

大嗣「我々をテロリストにして、戦時を演出する気か。選挙戦術としては見事だな」

【加奈子ルート】

「国連の暫定駐留部隊」が「停戦監視に来ている」のに「我々をテロリストに」仕立てることなどできようはずもない。

大嗣「君は本来、一士官に過ぎない。人道上の罪を犯したのでない限り、国際法上戦犯として起訴される立場にない。……だが、それでは関西世論は納得せんだろう。彼らは未だに、この戦争が一部の過激な学生の扇動によるものだと信じている。大衆心理として、悪者を限定して安心したいのだ」


大嗣「リストが来た。向こう側の、戦犯希望リストだ。……君の名前も、トップランクであがっておる」

−−望むところだわ……

私は小さく頷いた。

大嗣「勝手な罪状が沢山ついておるから、後で見たければ見たまえ……要は、初期の一予生を何人か差し出せ、という事だ。……だから、君にはもうグリペンを降りてもらいたい」

美樹「えっ!? ……どういう意味です」

びっくりして、私はおもわず問い返した。そして気づく。

美樹「まさか……戦犯予定者に死なれては困る、と?」

大嗣「そうだ。今すぐ、とは言わんが、考えておいてほしい。……予期される決戦に参加してもらうわけにはいかない」

美樹「そんな、大げさです。私一人死んだところで……まだ、候補生は沢山居るでしょうに」

大嗣「ところが、案外そうでもないのだよ……今度の講話、主要な戦犯は、一種予備生徒の経験者でなければならないのだ」

美樹「一予生でなければ? ……何故ですか? 何か理由が?」

大嗣「無論ある……彼らにとって、戦犯はあくまで学生でなければならない。そうでなければ筋書きに困る。……今度の戦争は。あくまで過激派の扇動による騒乱であり、国家転覆を目的としたテロリストたちの策略だった、というシナリオが、彼らの希望だ」

私は、司令が手にしたリストをチラッと盗み見た。

そこには、私以外にも知った名前がいくつかあった。

大嗣「ほとんどの関東軍の兵士は、扇動にのせられた哀れな被害者にすぎん……確かに、そう扱わねば、戦後の再統合など無理だがな。お互いに敵味方にわかれて戦った連中を、もう一度一つにまとめよう、というのだ」

そこまでは、私にも良くわかる理屈だった。

大嗣「彼らは特に、元自衛隊員と警察関係者からは、戦犯を出さん腹づもりのようだ。きりが無くなるし……関西軍の大半の自衛隊員が、納得せんからだろう」

美樹「むこうの自衛隊員が? なぜです?」

大嗣「一般の兵士たちにとっては、関東軍に与した自衛隊員の大半が、やむを得ぬ事情で強制的に参加させられたと信じたいのだ。……そう思わなければ、これから再び一緒になどやっていけまい」

美樹「でしょうが……高級士官に、彼らがそこまで思い入れるとは考えられません」

大嗣「そして、幹部レベルではまた別の事情がある。西日本政府の中での自衛隊の発言力はいまや、相当なもののようだ。今度の戦争で、もっとも得をするのは結局自衛隊かもしれんな」

美樹「その彼らは、再統合された自衛隊の強力な発言力を維持したい。その為に、自衛隊幹部に傷がつくのは困る……」

大嗣「そうだ。この戦争に積極的に関与した隊員への処分は、自衛隊再編成後、自分たちの手で内密におこなう。大っぴらに戦犯をだされては、自衛隊の看板に傷がつく……事情は、警視庁機動隊も、海上保安庁も一緒だよ」

美樹「その分の責任は、予備生徒で背負え、という訳ですね」

大嗣「そうだ。そしてその筆頭が、君になる」

きっぱりと、司令は告げた。

大嗣「君の名前を、関東自治共和政府は最大限利用した。今更、あれはメディア戦略でしたと言い訳してみたところで、通じそうにない……」

美樹「私が、この戦争の引き金を引いたのは事実です。私個人に関しては、それで構いません。ですが……そのリストには、開戦当初は二予生で、実質的に戦局の展開には関われなかった者の名前が多数乗っています。」

そこには隆史のように、戦争が中盤を過ぎてからグリペンに乗るようになった者の名前が幾つもあった。

美樹「彼らは、それこそ我々に扇動されたようなものです。罪を問うのが、妥当とは思われません」

大嗣「君のとおりだ。だが該当する初期の一予生はその大半がすでに戦死しておる。……それに、これは彼らに言わせれば、温情なのだよ」

フゥ、と大きく息をついて、司令は背もたれに寄りかかった。

大嗣「このリストのトップグループに、私の名前はない。……不思議だと思わんかったかね」

確かに、それは不思議、というより考えられなかった。

−−先生は、ずっと関東独立の精神的な支えの一つでありつづけた。

大嗣「理由は簡単だ。……このトップグループ、判決は極刑以外にありえない。そして私らのような者はそうなったら、まぁ、大人しく絞首台に登るしかないな」

美樹「それは私達だって、同じ事です」

大嗣「いや、そうではない……不惑もとうに過ぎた我々が、気の迷いであり自分の判断は間違いであった、と反省し嘆いたところで、世間は納得せん。だが、君らならば違う」

−−えっ!

あまりの言葉にびっくりして、私は司令を凝視した。

−−それは……つまり……

大嗣「君らのような、尻に卵の殻がついていそうな若者が、自分が間違っていました、僕たちがバカだったんですと泣き叫べば……若気の至り、という便利な言葉がこの国にはある。一端は死刑判決を下しておきながら、恩赦を与えても、世間は許すだろう」

美樹「先生は……私に、この戦争は間違っていたと、証言しろっていうんですか!」

大嗣「君らが間違いを認め、関東独立など血迷った若者の妄想だったと結論づける。そうすれば誰も死なず、全て丸く収まる……戦犯として誰かを処刑すれば、その者は関東にとって真の殉教者となる。それを崇拝し、続く者が現れないとも限らない」

美樹「それこそ……私の望みです!」

大嗣「だが首謀者とされた者がみな過ちを認め、みっともなく命乞いをすれば、残された血気盛んな予備生徒の大半も諦めるだろう。もし、万一続く予備生徒が居たとしても、その標的はまず君らになる。内ゲバを起こさせるのは、公安警察の十八番だ」

−−諒を殺した連中にむかって……間違いだったと認めて、命乞いしろなんて!

美樹「司令……今すぐ私を、最前線に送ってください。そうすれば、誰にも迷惑はかからない」

大嗣「君らが、戦後に過ちを認めるのが、今後の講和の重要な条件の一つだ。負けを認めておきながら……法廷で、延々と関東独立の正当性などを訴えられてはたまらん、というのが彼らの言い分だな。……賢くはあるが」

美樹「ご心配なく。法廷になど立ちません。それまでに綺麗に私自身についてケリをつけてみせます」

大嗣「……君のことだから、その反応は予想できたがな」

困ったように腕をくんで、司令はため息をついた。

大嗣「なんとか、考え直してくれんかね。……君一人で、他の予備生徒五人分の価値はある。君が法廷に立たないとなれば、その分、多数の人間を送り込まにゃならん」

司令が、深い葛藤の末に下した判断だというのは私にも痛いほど判っていた。けれど……

大嗣「さらに、一予生上がりの女性は少ない。間違いを認め、命乞いをするにしても、男ばかりじゃTV的に格好がつかない。過ちを認めたら罪一等減じる、というのはあくまで極秘の約束だ。もし世間が認めなかったら流れる」

−−諒……どうすればいいの……

大嗣「……確実に恩赦をもぎ取り、全員を助けるために、君の名前がどうしても欲しい」

美樹「……でも、先生……私は、今まで……諒は……」

大嗣「酷だとは承知している。だが……場合によっては、これから更に戦死者が出てリストの人数が足りなくなったら、君が面倒を見ている彼らも、該当者になるかもしれん。一予生でグリペン乗りだからな。……彼らを助ける為だと、呑んでくれんかね。このとおりだ。」

静かに涙をこぼす私にむかって、司令は立ち上がると、深々と頭を下げた。

大嗣「頼む……こうなっては、一人でも多くの生徒を救いたい。私がかわりに死んでなんとかなるなら……だが、私が生き残るこのも、講和の条件の一つだ。私は自決も許されん……彼らは残された大多数の関東人の権利を認めるかわりに、なんとしても我々を変節漢に仕立てあげたいのだ」

−ー社が……今度は社まで……

大嗣「無論我々だって全て諦めたわけじゃない。今でも打開策を探してはいる。が、うまくいくかは判らん。……その時は許してくれ」

私は泣きながら、ただ首を振った。どうしていいか、判らなかった。

【美樹ルート】

子供達を諭すべき立場の大人が、それも、権限と責任のある立場の者が、例え子供達の「扇動にのせられた」としても「哀れな被害者」であろうはずがない。 ただし、ヤクを盛られて正常な判断力を奪われたり、銃で脅されたり、人質を取られた等であれば、「やむを得ぬ事情で強制的に参加させられた」と言えよう。 しかし、どうして、学生集団が戦闘のプロ相手にそんなことができると言うのか。 また、航空機のパイロットなら、ヤクを盛られて操縦できるわけがないし、銃で脅された状態で操縦できるわけがない。 そもそも、学生集団が戦闘のプロ相手を武力衝突で屈服させたとなれば、それこそ「自衛隊の看板に傷がつく」だろう。 というように、誰がどう考えても「筋書き」に無理があろう。

国際法上の戦争犯罪は、戦争開始の正当性に関するもの、交戦法規違反に関するもの、非人道的行為に関するものに分類されるが、後者2つは戦争に参加しただけでは該当しない。 武力行使を伴わない独立宣言に対して、話し合いを試みずに武力で制圧したなら、武力行使の正当性があるのかどうか疑わしい。 さらに、独立宣言と無関係な一般人にまで「不自由かつ理不尽な生活環境」を強いる「実力行使を伴う強硬措置」を行なったのであれば、なおさら、その正当性は成立しないだろう。 それに対して、自由を取り戻すために反撃したのであれば、謂われなく奪われた正当な権利を取り戻すためのものであるから、戦争開始の正当性が存在する。 物語概略設定資料のとおりなら、国際法上の戦争犯罪に問われるべきは、関東自治共和政府ではなく、関西の行政府であろう。 さらに、開戦に関わっていない兵士であれば、交戦法規に違反したり、虐殺などの非人道行為を行わない限り、戦争犯罪に問う余地がない。 にも関わらず、本来問われないはずの罪状を捏造して処罰するなら、国際法上の捕虜の扱いに違反する。 「国連の暫定駐留部隊」が「停戦監視に来ている」状況で、その辺りを誤魔化せるはずがない。

関東圏行政府側の罪としては、萩野憲二の暗殺があるが、これは戦争行為による死亡ではないため、通常の殺人罪が適用される。

貴子「交渉は土壇場で、その内容が随分変わったわ。渋沢一尉には、昔の内容しか知らされていないから、早まった真似をするんじゃないかと、司令殿が心配していらしたわよ」

美樹「変わった……私が戦犯として告訴されるのではなくなった、と?」

貴子「いいえ、貴方は無論、被告席に立たされるわ。……ただ、それは十数人に限ったものではなく……この戦争の責任を特定の贖罪羊に押しつけるのはやめて、予備生徒全員が罪を負うことになったようね」

彼女は、淡々と告げた。

貴子「最後になって、関東人は正しい判断をしたのではないかしら? ……前線で戦った一部の人間に責任を押しつけて、戦争を支えた大半の人間は何食わぬ顔で被害者面とは、あまりにも身勝手ではなくて?」

社「そりゃ当たり前ですけど……違う話があったんですか?」

貴子「そのようね。いろいろな噂が流れていたし。それを避けるためにわたしも先生も行動したし……君のお母様が乗り出してこなかったら、事実そうなっていたかもしれないわ」

ーー真優様が、か……

貴子「理想を捨てて、一部に責任を押しつけて……歴史上、必要な局面もあるけれど、やはり今はそうすべきではないでしょうね」

私は、突然の話の展開に呆気にとられたまま、もはや何も言えなかった。

貴子「だから、わたしは君のお母様にも頼まれて、ここに来たのよ。……皆で責任の分担をするかわりに、一人一人の罪はそう、重いものにならないわ」

彼女はもう一度、わたしの肩をポン、と叩くと、微笑んだ。

貴子「大半の予備生徒は罰金刑……懲役刑では、コストがかかりすぎるものね。それより長期分割支払いの罰金刑が新設されそうよ。数百億円規模の安定財源になるから、関西世論も反対はしないでしょうし」

社「でも、まさか実際に戦った俺たちは、罰金刑だけってわけにはいきませんよね」

貴子「細かい内容までは、わたしには判らないわ。そもそも、それを決めるために裁判があるのでしょ。……でも、矯正施設は廃止されるようだから、仮に懲役刑になっても刑務所に何年か入ればそれで済むわ」

【美樹ルート】

「予備生徒全員が罪を負う」のであれば、「十数人」から「予備生徒全員」に人数が変わったに過ぎない。 どちらにしろ、「戦争を支えた大半の」「元自衛隊員と警察関係者」から「戦犯を出さん」という方針は維持されている。 さらに、日本政府を勝手に名乗り、自衛隊の指揮権を乗っ取った関西の行政府、および、独立宣言と無関係な一般人にまで「不自由かつ理不尽な生活環境」を強いる「実力行使を伴う強硬措置」を行なった「占領部隊」の責任は完全に無視されている。 これでは、「この戦争の責任」を「特定の贖罪羊に押しつける」ことには何ら変わりはない。 あいかわらず、「前線で戦った一部の人間に責任を押しつけて、戦争を支えた大半の人間は何食わぬ顔で被害者面」である。 「一人一人の罪はそう、重いものにならない」からといって許されるものではない。

「関東人は正しい判断をした」とは、何を言っているのか意味不明である。 もともと、「十数人に限ったもの」は「向こう側の、戦犯希望リスト」(関西側の意向)に従ったものであり、関東側の自発的意志ではない。 「元自衛隊員と警察関係者からは、戦犯を出さん」も関西側の希望である。 関西の行政府や「占領部隊」の責任が無視されているのも、関西側の都合であろう。 このように、適切な戦後処理を妨げているのは、関西側の身勝手な都合によるものであり、関東側の判断とは関係がない。

関西政権は捕まった予備生徒に戦時捕虜としての立場を認めていない。本来だったら、俺は今頃、犯罪者として留置所か独房送りになり、厳しい取り調べを受けていただろう。

【最終ルート】

戦時捕虜をそのように扱えば国際法に違反する。

関東・関西間の航空戦

隆史「訓練に用いるのは、フェライトを塗装した特別仕様のグリペンである。離着陸後は、指示された経路に従い目的地へと向かえ。レーダーの探知を避け常に超低空で飛行せよ。友軍のレーダーに対しても同様である」

プリントアウトには、日本列島の中部地帯を蛇行しながら若狭湾へと向かう飛行経路が示されていた。


数ヶ月に一度、たった一機のグリペンでアトランダムに行われる訓練を阻止する為だけに、関西軍は他の任務とは別に一個飛行小隊をCAPとして常に飛行させている。また、別に二個飛行小隊が地上で常時飛行可能状態で待機しているらしい。

これらの態勢を維持するには、最低でも24機の作戦機、36人の一線級パイロット、1600人あまりのグランドクルーが常時の任務から外れる必要がある。さらに消費される航空機燃料は関西軍の年間使用量の20%から30%に及ぶと予想された。


訓練の攻撃目標は、原子力発電所だった。


隆史「もっとも、これまで実際に爆弾を投下したパイロットは存在しない。……目標まで到達し得た者が不在なのだから、当然ではあるがな」

【最終ルート】

「超低空で飛行」すれば「フェライトを塗装」しなくてもレーダーで探知するのは困難である。 そして、GPWS(対地接近警報装置)用の地形データは民間ベースで出回っており、INS(慣性航法装置)が使用可能なら、電波を使用しなくても山岳等を回避して飛行することは十分に可能である。 「目標まで到達し得た者が不在」であるのは、「一個飛行小隊をCAPとして常に飛行させている」からである。 単機と一個飛行小隊では戦う前から勝負が見えており、山岳地帯を抜けた途端に「CAPとして常に飛行させている」「一個飛行小隊」に見つかるのでは、「目標まで到達し得た者が不在」なのは当然であろう。 そして、「一個飛行小隊をCAPとして常に飛行」させなければ「目標まで到達」を阻止できないからこそ、CAP(戦闘空中哨戒)が必要なのである。 レーダー等で捕捉してからスクランブルをかけて十分に間に合うのであれば、「一個飛行小隊をCAPとして常に飛行」させる必要はどこにもない。

以上を踏まえるなら、常時、敵の全航空戦力による奇襲に備えて、航空戦力の大多数を「CAPとして常に飛行」と「地上で常時飛行可能状態で待機」に回す必要があるはずである。 あるいは前線付近の航空戦力を最小限に留め、主要基地を前線から離れた位置(関東政府なら東北か北海道辺り)に配置する必要がある*12。 これは、関東、関西双方に言える。 しかし、物語中では、終盤以外にそのような体制は取っていない。

もしも、双方とも、航空戦力の大多数を「CAPとして常に飛行」と「地上で常時飛行可能状態で待機」に回していないなら、敵の隙をついた奇襲が成功する。 航空機の離陸には一定の時間が必要であり、滑走路の数にも限りがあるので、多数の航空機を短時間で離陸させることはできない。 攻撃側は、離陸後、基地周辺の低空で旋回し、他の機が離陸し終わるのを待てばよい。 それに対して、防衛側は、敵を捕捉してからスクランブルをかけても、離陸できる機体数には限りがある。 とくに、「地上で常時飛行可能状態で待機」していない航空機を直ぐに離陸させることは難しい。 中途半端なタイミングで滑走路や誘導路上に戦闘機を出してしまうと、爆弾を積んでいて良く燃えるマトにしかならない。 かろうじて何機かを離陸させた防衛側と全航空戦力を投入した攻撃側、多勢に無勢では基地への攻撃は防げない。 滑走路が破壊されてしまえば、いくら格納庫に航空戦力が残っていようとも、逆転は不可能である。

「実質的に戦時体制」であるのに、そうした奇襲攻撃を検討もせず、相手の奇襲にも備えないのはあり得ない。 そして、この物語では、両軍の物資の消耗がかなり厳しいことが描かれている。 相手の奇襲にも備えなくても物資の消耗が厳しいなら、奇襲に備えた時点であっという間に物資が底をつく。 それでは、「実質的に戦時体制」を長期間維持することは不可能である。

安全対策

車道と歩道が分離した立体構造をしている筑波学園都市には、歩道橋が多数あります。

その一部は撤去されていますが、強度のしっかりとしたものは残されており、その下をグリペンが通過したりもします。

舞台背景

常識的に、滑走路上に歩道橋を放置するなんてあり得ない。 軍隊である以上、必要があれば、どんな危険なミッションであっても実行する。 だからこそ、犯す必要のない危険は可能な限り取り除くのである。

戦闘機の運用は事前に部外者に通報しておくわけにはいかないから、その間をぬっておこなうことになる。

若葉「はい」

わたしは、傍らにある、古めかしい受話器を手に取った。

ここ筑波戦闘航空団は実質的に戦時体制にあるとはいえ、建前は停戦中である。

そして民間航空機は今日も、運行を続けている。それらとのニアミスを生じないようにするのも、筑波戦闘航空団管制隊管理班の重要な任務の一つである。

「実質的に戦時体制」にある中で、その戦闘区域で「民間航空機は今日も、運行を続けている」など常識的にありえない。 いつ撃墜されるかわからない危険な戦闘区域であれば、航空会社が航空機を飛ばしたがらないし、乗りたがる乗客もいるわけがない。 通常は、軍用機と民間航空機の「ニアミスを生じないようにする」ために、両者の空域を明確に分けて運用する。 空域を分離できない場合は、「事前に部外者に通報しておく」か、あるいは、滅多に起きない緊急時以外にありえない。 そうした運用ができないなら、「建前は停戦中」でも「実質的に戦時体制」であることが一目瞭然である。 仮に、「実質的に戦時体制」であることが隠せたとしても、民間機を飛ばすには危険すぎる状況であることまでは隠せない。 そもそも、政府として、民間航空機がそんな危険な飛行をすることを許可できるわけがない。

経済の常識

作者はどこかのインチキ経済評論家の主張でも真に受けたのだろうか。 経済の常識に反するトンデモ理論が多すぎる。

彼の提案では、日本と同様に分割した中国(六つに分割)、朝鮮半島(新羅・百済・高句麗に分割)、台湾、などで共通通貨をもちヨーロッパや北米(アメリカ)に対抗する予定でした。


それは、経済的に追いつめられていたEUの資本家に、好ましいものとして映ります。彼らは、ユーロ単独ではもはや米ドルと国際基準通貨の地位を争うのは難しいと考えていました。

設定資料 - 製品紹介

「国際基準通貨」は基軸通貨のことを指すと思われるが、通貨発行国にとってその地位を争う理由はない。 基軸通貨になれば、その通貨発行特権として、経常収支の赤字分がほぼ自動的に自国の金融資産となる等のメリットがあるとされる。 それは、確かに、自国経済には有利に働くが、あくまで融資額でしかないので、その金額がそのまま自国の利益になるわけではない。 例えば、基軸通貨を発行する米国の経常収支(対GDP比)は数%前後であり、通貨発行特権で得られる利益よりも貿易自由化を促進して得られる利益の方が遥かに大きいと予測できる。 また、通貨発行特権は、国際取引に使用される機会に応じて得られるものであって、基軸通貨として1位にならなければ得られないものでもない。 以上を踏まえると、欧米とは、「対抗する」「地位を争う」ことよりも、協調して相互間の取引を増やした方が圧倒的に得になる。

尚、「円経済圏」と名付けている以上、ここで言う「共通通貨」は円のことを指していると思われる。 しかし、「円経済圏」において円を「共通通貨」とするためには、日本は円の発行権を放棄しなければならない。 何故なら、そうしなければ、日本が通貨発行特権を利用して「円経済圏」から無限に資金を吸収することが可能になるからである。 日本が円を刷り増して資金調達に充てれば、それによりインフレが起きるが、その損失は「円経済圏」の全ての国が負うことになる。 利益を日本が独占し、損失を「円経済圏」の全ての国が負担するなら、結果として、日本が「円経済圏」から資金を吸収することに他ならない。 常識で考えて、そんなことを「円経済圏」に参加する他の国が認めるわけがない*13。 円の発行権を日本政府から欧州中央銀行のような独立組織に移行させるなら、「共通通貨」を円とする必要性は全くない。 むしろ、円を日本の通貨として残した上で、新たな「共通通貨」を新設した方が、移行がスムーズに進むだろう。 であれば、「円経済圏」という名称が意味を持たなくなる。

発足時、財政基盤の弱かった関東政府は、押し寄せる国債の返済を拒否した。 そして、旧来の日本政府とは直接的な繋がりのない、新たな行政府を発足させた。


……そして、すでに完成している官僚機構を残しては、新たな旨味が得られないという打算も大きかった。

−−結局、目先の小金に目がくらむ馬鹿と、理想論ばかりの夢想家しか、居なかったからよね。

「旧来の日本政府とは直接的な繋がりのない、新たな行政府を発足させた」という建前で「国債の返済を拒否」すれば、国際社会の信用は地に堕ちる。 また、「すでに完成している官僚機構」を破壊すれば、新たな行政組織を一から構築しなければならず、莫大な費用と手間が必要になる。 それでは、「目先の小金」すら得られない。

その結果、関東政府は財務的には日本政府の正当な後継者となれず、多くの国家官僚と政府系金融機関は全て、関西軍の支配下に入ることになった。

システムとしての日本経済を、関東は自ら放棄したのである。

−−そのくらい、誰か予想してしかるべきだったのに。

関東政府は当初、旧来の行政機関を放棄しても、中枢がほぼ東京に集中した政府系金融機関を支配できると考えていた。 だが、現実には政府−−官僚と、政府系金融機関は一体だった。


実質的には預金封鎖をおこなった西日本政権の手元には、その莫大な現金があった。

「関東政府」が「当初」想定していたこととして書かれているので、これは、「強権的な統治」の後の話ではないだろう。 であれば、その段階で「中枢がほぼ東京に集中した」のであれば、当然、大半の現金も東京で管理されていたはずであろう。 常識で考えれば、「中枢がほぼ東京に集中した」のに、現金の大部分を関西で保管していることはあり得ない。 だから、「預金封鎖をおこなった」としても、東京の建物に「西日本政権」の人間が立ち入らない限り、そこで管理されているであろう「その莫大な現金」には手も足も出ない。 関東に保管されていたであろう現金を「西日本政権」が持ち出すためには、武装勢力が堂々と東京の建物に押し入るか、夜間にでもコッソリ潜入するしかない。 しかし、そうしたことがあれば物語中でも大きな事件として語られているだろうが、そのような事件への言及は一言もない。

また、「強権的な統治」の後の話であったとしても、「内戦への備えのなかった関西系自衛隊勢力は不意をつかれ敗走」したのでは、「強権的な統治」の際に「莫大な現金」が持ち出されたということも考えにくい。

そもそも、「中枢がほぼ東京に集中した政府系金融機関を支配」したなら、「旧来の日本政府とは直接的な繋がりのない、新たな行政府を発足させた」という建前で「国債の返済を拒否」など通るはずがない。 「旧来の日本政府とは直接的な繋がりのない」ことが「国債の返済を拒否」する正当な理由となるなら、当然、「旧来の日本政府」の資産を継承する権利もないし、「日本政府の正当な後継者」でもない。 「日本政府の正当な後継者」として「旧来の日本政府」の資産を継承するなら、当然、その資産から「国債の返済」を行う債務も継承する。 国内法的にも国際法的にも、資産と債務を切り離す根拠はなく、資産だけ継承して「国債の返済を拒否」などできるわけもなかろう。

東京を中心とした民間経済を抑えても、それだけで国家経済を維持することは不十分であることを、理解している者はほとんど居なかった。

−−結局、今、ポケットに入っているお金が重要だったのに。

何年も戦争を継続するのに、「今、ポケットに入っているお金」に大きく依存しているならば、既に、関東も関西も終わっている。

過去、莫大な国債を抱えていた日本が、国債信用力を維持できたのは、郵貯と簡保によって、五〇〇兆円という、国民の財産を、直接押さえていたからに他ならない。

借金がいくらあっても、手元に資金さえあれば、経済は破綻しない。

郵貯はもともと、非常の接収に備えた国家予備資金としての性格が色濃い。

【共通ルート】

預金者の同意も得ずに「非常の接収に備えた国家予備資金」として流用すれば、間違いなく、暴動が起きるだろう。 だから、「郵貯と簡保によって、五〇〇兆円という、国民の財産を、直接押さえていた」としても、それを「莫大な国債」の返済に充てられるわけがない。 「借金がいくらあっても、手元に資金さえあれば、経済は破綻しない」とは、その「資金」を「借金」返済に充てられる場合に言えることである。 「資金」がいくらあっても、それを「借金」返済に充てられなければ、「経済は破綻」する。

耕一郎「そうだ。だからこそ米国は円経済圏を絶対に許容しない……アジアと日本が親密な関係になるのを阻害するのは、大戦以降の米国の基本的な対極東ドクトリンだ。安保もその為にこそあった」

先生は、湯飲みを握りしめると、昂る自分を抑制するかのように一息にそれを飲み干す。

耕一郎「まして、世界最大の市場がブロック経済として独立するなど、米国の覇権主義にとっては悪夢でしかない。……だから米国は我々を支援して名目だけでも円経済圏を掲げる関東をたたきつぶした」

【最終ルート】

設定資料によれば、円経済圏構想とはEUと「同様のシステム」をアジアに導入しようとするものであって、「世界最大の市場がブロック経済として独立する」ことではないはずである。 もちろん、「世界最大の市場がブロック経済として独立する」と米国経済に損害を与えるが、同じように「円経済圏」にとっても経済損失を産む。 経済効率を高めるために経済圏を拡大するはずなのに、それと逆行する「ブロック経済として独立する」理由が全くない。

社「貴様らには判っていたんだ……円経済圏が成立すれば、短期的には国内の資本が人件費の安い大陸へと逃げ出す。すでに国際化を果たしている技術・流通系の企業には都合がいいが、旧態然とした産業にとっては大打撃だ。その経済損失から目をそらさせるために、関東を餌にしようとした!」

【最終ルート】

「短期的には国内の資本が人件費の安い大陸へと逃げ出す」とは産業の空洞化のことを言っているのだろうか。 一般に、産業の空洞化が進めば進むほど経済が発展するので、「経済損失」などは発生しない。

航空戦力

グリペン

世界でもユニークな中立政策をとるスウェーデンが開発した最新鋭戦闘機が、このJAS39グリペンです。 設計思想の最大の特徴は、最新の技術を用いて最強の戦闘機を作るのではなく、新たな技術で安価に維持・運用できる戦闘機を求めた点でしょう。 戦闘機としては例外的なことに整備性に優れており、戦時には一人の職業軍人と簡単な訓練を受けた予備役兵五人で整備可能だと言われています(対して、条件は異なりますが米空母では68機の作戦機に二千五百人あまりの航空要員が必要です)。 ターンアラウンドも短く、人力でミサイルを装着できたり、エンジン始動中にも燃料補給が可能など実用性を最優先にした設計になっています。 パイロットを支援するための機能も豊富で自動着陸機能等も備えており、訓練時間を短縮することによりパイロットにかかるコストも抑えています。

もう一つの特徴はその極端なSTOL性能で、特別な補強をおこなわない700mの直線道路で離着陸が可能です。 スウェーデン空軍はベース90と呼ばれる基地分散システムを用いており、戦時には高速道路を利用し広大な国土にグリペンを分散配備し、空襲による被害を避ける運用をおこないます。

また、スウェーデンは戦闘機の多用途化をもっとも最初にはじめた国の一つであり、グリペンはその集大成であるともいえます。 JASは日本エアシステムの略では無論なく、戦闘(Jagt)、攻撃(Attack)、偵察(Spaning)のそれぞれスウェーデン語の頭文字をあわせたものです。 小型で軽量(F-15やF-18の半分以下、F-2相手でも2/3)、だけど何でも出来る小粒でもピリリと辛い戦闘機、がグリペンです。

登場兵器

設定に適した機体としてグリペンを選んだのではなく、作者の趣味でグリペンを選び、それに合わせて設定を考えたと思われる。

  1. 航続距離が短いから内戦にしよう
  2. 「特別な補強をおこなわない700mの直線道路で離着陸が可能」を活かすために飛行場は使えないことにしよう
  3. 自衛隊が主戦力だと飛行場が使えるはずなので、学生を主戦力にしよう

しかし、それにより生じた無理に対して何の対策も施していないため、非常に荒唐無稽な設定となっている。

離着陸事情

「特別な補強をおこなわない700mの直線道路で離着陸が可能」とは、路面強度と直線距離の要件に過ぎず、それ以外の滑走路に必要な要件を必要としないという意味ではない。 スウェーデンでも、滑走路に使用可能な設計で建設された一部の高速道路を、通常の基地が破壊された場合に代替的に使用できるようにしているだけである。 他の国でも、地上構造物を容易に着脱できるようにしたり、改造工事を行なって使用している。 代替滑走路として建設されていない道路を何ら改修せずに常時運用することは不可能である。

とくに、制限表面と滑走路の排水性能は重要である。 軍用なので、限度はあるものの、好天時にはある程度の妥協はできるかもしれない。 しかし、悪天時には妥協の余地が全くない。 悪天時に安全な離発着ができないなら、悪天時に奇襲を受けたらひとたまりもない。 敵の立場に立てば、悪天候になるのを待ち、悪天候になったら一気に奇襲を仕掛ければ良い。 臨時運用なら悪天時の使用を断念することが可能かもしれない。 しかし、年単位で「実質的に戦時体制」を続けるなら、常時運用できないのは致命的である。

制限表面を確保するには、道路周辺の高層建築物の建設を制限しなければならない。 近距離物件では、ガードレールや中央分離帯ですら邪魔である。 滑走路の真上の歩道橋などもっての他であろう。

滑走路の排水性能は制限表面の確保よりも重要である。 轍による不規則な水たまりは、高速で滑走する航空機にとって予測できない強力な横力を発生させる。 また、グリペンは逆噴射装置を持たないので、着陸時にハイドロプレーニング現象が起きれば、停止距離が大幅に伸びてしまいSTOLの意味を失う。 いずれも非常に危険極まりない。 滑走路の排水性能が足りなければ、天候が回復しても滑走路が水浸しであれば離着陸ができない事態が生じる。 味方の立場に立てば、それだけ離着陸できない機会が増えて不利になる。 敵の立場に立てば、天候が良い状態で反撃を受けずに奇襲をかけられるので有利になる。 滑走路の排水性能を確保するなら、轍の補修、溝に詰まったゴムの清掃、再グルービング処置が必要になる。 日常的に車両用の道路として使っている道路を転用するなら、その際に、大掛かりな補修作業が必要になる。

STOLを使用するなら、現実的には、「その他の空港」である調布飛行場(東京都,800×30)や竜ヶ崎飛行場(茨城県,800×35)、ホンダエアポート(埼玉県,720×25)等の非公共用飛行場や妻沼滑空場(埼玉県,1500×100,未舗装)、板倉滑空場(群馬県,1000×70,未舗装)等の場外離着陸場を利用することになろう。 大利根飛行場(茨城県,600×20)や阿見飛行場(茨城県,600×25,2015年供用廃止)は滑走路長が若干短いが参考程度に記載しておく。 「実質的に戦時体制」なら関東上空は危なくて民間の定期便など飛ぶはずがないので、羽田空港や成田空港も使えるはずである。 年単位で「実質的に戦時体制」を続けるのに、代替滑走路として建設されていない道路を何ら改修せずに常時運用することは現状の技術ではあり得ない。

基地分散

筑波市内に基地施設を集中させていては、「空襲による被害を避ける運用」の意味がない。 航空機の速度を考えれば、筑波市内はどこでもほぼ同じ場所である。 基地施設の場所を上手く隠せたとしても、威力の高い爆弾で市街全域を破壊されればひとたまりもないし、丸見えの滑走路用道路は攻撃し放題である。 滑走路用道路が破壊されれば、航空機の離発着も陸上輸送もできなくなる。 この点においても、「その他の空港」や非公共用飛行場や場外離着陸場を利用することで「空襲による被害を避ける運用」をする方が現実的だろう。

コスト

関東政府は資金難という設定のようだが、それなら、既存ストックを活用するのが常套手段である。 いくら「安価に維持・運用できる戦闘機」とは言え、決して安い買い物ではない。 新規に本体と整備機材を大量に購入するのでは資金難の設定と矛盾する。

T−2およびT−4

社「それで、お前はどうなんだよ。一予生にあがって、T-2で飛んでるって聞いたけど、本当なのか? だったらこんなところで油うってる余裕はないだろうけど」

達也「嘘じゃねえよ。これを見ろ」


社「覚悟は出来ています……T-4を一機、俺にまわしてください」

隆史「確かに、計画はあった。……爆装仕様など、T-4の各種実戦参加案は検討済みだ。だが、すでにそのプランはキャンセルされている」

【加奈子ルート】

百歩譲って筑波市内の一般道路からグリペンの離着陸が可能としても、「特別な補強をおこなわない700mの直線道路で離着陸が可能」なように設計されていないT−2やT−4の離着陸はどうしているのか。 これらが離着陸可能な滑走路があるなら、筑波市内の一般道路を滑走路代わりにする必要はないはずである。

管制塔?

オープニングムービー開始早々、変な形の塔が登場する。 誰もが「あれでは管制塔の機能を果たさない唯のマトじゃないか」と思うだろう。 しかし、あれは、舞台背景で松見公園の「謎の展望塔」と紹介されており、管制塔とは全く関係ない建物のようである。 だったら、そんなタイミングで思わせぶりに登場させるなよとツッコまざるを得ない。

筑波戦闘航空団では、市街中心部にある三○ビルの上部展望エリアを改装して、管制塔として使用しています。 基地として使用している道路全てが見通せるわけではありませんが、ASDE(空港面探知レーダー)を併用して作戦機の運用をおこなっています。

舞台背景

ASDEは建物を貫通して機体を映すことができないが、Googleストリートビューを見る限り滑走路を全て見通せる場所はない。 仮に、三井ビルの屋上にASDEを設置したとした場合、土浦学園線の西方向道路は街路樹が邪魔になる。 学園西通りの土浦学園線より北側と学園東通りは完全に影になる。 土浦学園線の東方向道路と、学園西通りの南側の一部は影にならない。 このままでは、主滑走路の極一部と横風用滑走路(東方向道路)しか映らない。 道路の周りの建物を全てなぎ倒さない限り、まともには使えないだろう。

管制塔を三井ビルの「上部展望エリア」だけに設けるなら、筑波市内だけの限定した「基地分散」の意味すら失われる。 ビルの内装の改装だけなら、パッと見は管制塔に見えないかもしれない。 しかし、ASDEを設置すれば明らかに目立ってしまう。 ASDEごと管制塔を破壊されてしまえば、他の基地設備が無事でも基地機能が麻痺する。

演出

捜索(若葉ルート)

美樹「……もう、陽が沈むわ。そろそろ」

−−私が、どうしてこんな立場に、

けれど、私が言わなければいけない、というのも判っていた。

美樹「ヘギー、……萩野くんなら、きっと大丈夫よ。今あわてて、私たちがみつけなくても、だから」

若菜「あっ!」

だが、私の言葉など聞こえていないかのように、突然、水木さんは声をあげた。

若菜「動いたっ!」

落ちそうなほど、身を乗り出して、前方左側の稜線脇を指差す。

若菜「あそこ!」

美樹「ほっ、本当!?」

若菜「左の方、あっちです、あっち、今確かに!」

私は、ちらっと香坂陸曹を見た。

恵美「……あちらは、先ほど一度、通過した場所です。」

−−目の錯覚、……いえ、もしかしたら願望からの幻覚か。

私はがっくりと、肩を落とした。一瞬、おもわず期待してしまっただけに、……よけいに気分が沈んだ。

そして、ちゃんと現実を告げなければいけない、と決心を新たにする。

若菜「あれ、きっとそうです! 絶対に!」

美樹「あのね、水木さん」

若菜「早く、あっちに行ってください!」

美樹「水木さん。あそこは、先ほど通ったばかりの場所よ!」

若菜「そんな……で、でも! 本当に動いたんです! 本当です!」

美樹「……ねえ、いいかしら、水木さん」

若菜「本当なんです! 信じてください! いま!」

美樹「だから、さっきあなたも見たところだから」

若菜「いいから行きなさい!」

予備生徒「……こっちは平気ですよ。燃料には余裕ありますし。……もう少し暗くなると厳しいですけどね、まだ、今なら」

−−困ったな。けれど、

私は、ちらっと岸田一佐を見た。視線が合う。

岸田一佐は、小さく頷いた。

−−そこをもう一度確認すれば、逆に踏ん切りがついて、いいかもしれない。

徳治「判りました。そちらへ向かいましょう。もう一度、正確に方角を指示してください」

それから岸田一佐はパイロットに指示を出す。

若菜「十時、いえ十時半の方角です。距離は……も、もう少し右!」

滑るように、ヘリコプターが加速する。

若菜「そうです。そっち」

予備生徒「……了解……」

若菜「……あっ!」予備生徒「……おっしゃっ!」恵美「……ウソッ……」

突然、驚きの声と共に、ローター音が甲高くなる。

−−えっ!

私も、発作的に水木さんを押しのけるようにして、身体を乗り出した。

−−まっ、まさか?!

若菜「見つけたっ!」

大声と共に、水木さんは後ろ手で命綱の繋がったカラビナを外す。

……私は、目の前に見えてきたその予想外の光景に絶句したまま、今にも飛び出しそうな水木さんの腰を慌てて抱きしめた。

どうして、この後、時間を巻き戻して主人公視点に切り替えるのか? 「目の前に見えてきたその予想外の光景」等から、ただの見間違いではないことは明らかである。 この状況で、何故、感動の再会シーンに即突入せず、無駄に引っ張らなければならないのか。 TV番組では、視聴者に席を離れさせなくするために、思わせぶりなシーンのあとにCMに突入することがある。 しかし、これは、TV番組ではないから、そのような無闇な引っ張りは必要がない。

プレイヤーをやきもきさせたいなら、このシーンの演出方法は完全に逆である。 墜落後の捜索シーンの途中に主人公視点を入れているが、それによりプレイヤーは主人公の生存を知ってしまう。 常識で考えれば、主人公視点を入れた以上、墜落直後は生きてたけど発見時には死んでいたという展開はあり得ない。 結末も判りきっていて展開も読める物語を延々と見せられるのは苦痛でしかない。

延々待たされた挙句、ようやく、捜索の最終段階のシーンになる。 そこで、主人公が見つかりそうという所で、また、時間を巻き戻して主人公視点に切り替えられては、引っ張りがしつこすぎる。 プレイヤーは、感動の再会シーンを期待させられて、無駄にお預けを食らう。 墜落後の主人公の行動を知らせたいなら、後で、回想シーンなり、報告シーンなりを挿入すれば良いだけである。 こんな無駄に引っ張る必要はない。

プレイヤーをやきもきさせたいなら、主人公の生死の情報を最後まで伏せておくべきであろう。 「もしかして、主人公死んじゃったの?」「この先は残されたヒロインの物語なの?」という展開もあり得ると思わせるだけの不確定さがあってこそ、やきもきする余地があるのである。 そして、捜索本部等で待っているヒロイン等を詳細に描写することで長々と引っ張り、発見シーンでは一気に加速的に感動の再会に持ち込めば良い。 主人公の生死を早々と知らせて、発見シーンで延々と引っ張るのでは、演出の仕方が完全に逆であろう。

演説(最終ルート)

時折、未来のインタビューシーンを挿入することで、計画が成功したことを示唆している。 しかし、ネタバレで結末が判っているのでは面白みに欠ける。 一方で、最後の演説の途中で唐突に物語が終わる。

  • 計画の成否を不明にしたいなら、成否を示唆する未来のシーンは入れるべきではない
  • 計画の成否を明らかにするなら、演説の途中で終わらせずに最後まで描くべき

作者としては、ハッピーエンドにしたいのだろう。 だから、計画が成功するという結末を予定している。 しかし、演説のシーンから計画成功に導く説得力のある過程を描写できない。 だから、未来のシーンを挿入して成功を示唆しているのだろう。 これも演出の仕方が完全に逆である。 計画成功に導く説得力のある過程を描写すれば良い。 そうすれば、未来のシーンなど挿入しなくてもハッピーエンドは明らかであるし、途中でネタバレすることも防げる。

どうして、そんなおかしな演出になっているのか。 それは、敵対勢力の抱き込みに成功するだけの説得力をもった演説内容が用意できなかったからに他ならない。 敵対勢力を抱き込むために必要な演説内容は、聞き手の理想との一致性とその理想の実現性である。 しかも、小難しい話を入れずに、わかりやすく簡潔に伝える必要がある。 対象者は「憲二の理想論」を想定しているようなので、それならば次のような内容を簡潔に伝える必要がある。

  • 歪められた「憲二の理想論」の真の理想の違い
  • 真の「憲二の理想論」が関東政府のやり方とも関西政府のやり方とも違うこと
  • 真の「憲二の理想論」を実現する意志があること
  • 真の「憲二の理想論」の実現に必要な支持等を得ていること
  • そのために「萩野憲二の息子」をシンボルとしたこと

手段として、「萩野憲二の息子」の動機の変遷を簡潔に語ってもよかろう。 それにより「萩野憲二の息子」の本気度と支持層を示すことができる。

しかし、物語では、イデオロギーと過去の言い訳を小難しい言い回しで語っているだけである。 聞き手の求める内容に沿っていないし、簡潔さにも欠ける。 しかも、TV放送等を行なっているだけで、前線の兵士に強制的に聞かせる手段を用意していない。 それでは、敵対勢力を抱き込むことなど不可能であり、計画成功に導く説得力のある過程を描写できるわけがない。

褒めるところ

耕一郎「だが、公表できたのはそこまでだ。本来の論文ではその後、こう続いていた。文明の進歩に伴う時空間の広がりに、恒温動物が対応出来るのは数百万年が限度で、その後は進化した被子植物にその地位を奪われるだろうと……シダ植物に続いて変温動物、そして我々人類が現れたようにな」

社「……あの馬鹿親父なら、いかにも言いそうな戯言ですね」

−−なんだぁ? ……被子植物?

耕一郎「そもそも、円経済圏理論、などという俗称は、マスコミ対策の後付けだ。本来は経済学的見地から捉えた生物社会のエントロピー論……円経済は、そのごく一部を切り取っただけにすぎん」

−−いくらなんでも……そりゃ行き過ぎだろ……

耕一郎「あ奴の試算によれば、光年単位に広がった文明の経済には、主役が植物の方が都合がいいらしい。なにしろ、光さえ届けば閉鎖系を維持できる」

「経済学的見地から捉えた生物社会のエントロピー論」は、非常識と常識のバランスが非常に絶妙である。 扱う時間や空間が通常の経済学の範囲を遥かに突き抜けているし、経済学の枠すら突き抜けて科学の領域にまで侵食している。 その一方で、その前提での考察としては、科学的な厳密性には欠けるものの、一般常識的に見れば妥当な考察となっている。

耕一郎「無論、それだけが理由では決してなかったんだろうがな。……もう一つは、貴様だ」

やがて、ため息のように教授は呟いた。

社「はぃ? ……おれが、何か?」

耕一郎「近未来の理想社会……あ奴がそれを実現させようとしたのは、ただ純粋に……一人息子の貴様に、よりよい社会で生きて欲しい、との一途な願いからだ。国家という旧時代の軛に縛られずに育って欲しい……そうではなくては、どうしてこれほど変革を急ぐ必要がある」

突拍子もない理論を提唱する一方で、子供に愛情を注ぐ人間らしさも持ち合わせているという設定は非常に興味深い。

耕一郎「……地球という生命相の将来と貴様の生活環境。奴にとって、これらは全て同じ事象の延長上にあった。貴様が幸せに育ち、植物が数百万年単位で交易をおこなう未来のために、今、関東を独立させる必要がある……信じられんかね?」

社「……千年一昔を主張していた人ですから、あり得るかもしれませんね。……明日の夕飯のメニューと、千年先の人類文明について同じ視点で語る人だとは、母の言葉でした」

これは、一見すると矛盾するような設定をうまくまとめていると言えよう。 ただし、こうした面白い設定を全体の物語に全く生かせていない。

Last modified:2017/11/19 21:54:54
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*1 「一部の占領部隊がおこなった」「実力行使を伴う強硬措置」により「不自由かつ理不尽な生活環境に追い込まれた」ことに対する反発であるなら、それは「憲二の理想論」は全く関係がない政治的自由を求めた戦いである。

*2 「萩野憲二氏を尊敬」して「その意見が正しいと判断して、自分の意志で戦ってる」なら、「憲二の理想論」に対して、今更、疑問を挟む余地などあろうはずもない。 であれば、「お前の親父は、本当は何がしたかったんだ?」「それが本当に命をかけるだけの価値があるものなのか、知りたい」という疑問は明らかに設定と矛盾している。 更に言えば、「その意見が正しいと判断して、自分の意志で戦ってる」なら、自らの意志で関東政府に加担しているのであり、関東独立が「憲二の理想論」を叶える手段だと信じているはずである。

*3 「その理想が歪められているのは事実」だと知っていて「今の関東の正義なんて認めちゃいない」のであれば、「憲二の理想論」を歪めている関東政府に加担する理由など何もないはずである。

*4 片方は水木若菜の台詞で他方は萩野社の台詞であるので、両者は別人の台詞である。 しかし、水木若菜は「筑波航空団に居る人たち」の共通認識として、萩野社も「俺たち」「みんな」の共通認識として、それぞれ語っている。 この二人の認識に間違いがないのであれば、両者はいずれも「筑波航空団に居る人たち」「俺たち」「みんな」の共通認識となる。 いずれかの認識が間違いであると仮定すると、そうした間違った認識を披露した合理的理由の説明がつかない。 合理的理由もなく読者を惑わせる描写を挿入するのは物語のルールに反する。

*5 そこだけを見れば、「リアリティがある」「現実的」「説得力がある」「博学」「しっかり作りこまれている」「緻密」という評価もあながち間違いとは言い切れない。しかし、細かい所だけがしっかりしていても作品全体で見れば大したプラスにならないし、むしろ、全体のバランスが悪くなるだけであろう。

*6 設定資料では「旧来のブロック化経済とは微妙に異なる」と説明されているが、ゲーム内では「世界最大の市場がブロック経済として独立する」と説明されている。よって、「微妙に異なる」とは、「政治単位を小さく分け」ることの有無のみを指していると思われる。つまり、経済的には「旧来のブロック化経済」そのものであり、ブロック経済は内部に対しては自由化しつつも外部に対しては閉鎖的な経済体制を指す。

*7 作者自身がそう公言して居るらしいが事実関係を確認できず

*8 小型の拳銃とかならともなく、いくら小型でも戦闘機の密輸は無理かと

*9 さすがに、実機訓練を見つからないように実施するのは無理かと

*10 「1960年代に起きた学生運動では急進論に基づいた暴力的運動が盛んだったじゃないか」と言う人がいるかもしれないが、学生運動の参加者は命まではかけていない。 学生運動の参加者は、武装していても投石や火炎ビンが関の山で、銃や爆弾までは使用しておらず、当然、航空機戦力などもない。 逮捕されても懲役刑にしかならないので、機動隊も銃は使えない。 だから、学生運動の参加者は、命までは取られないことがわかっていてやっていたのである。

*11 真偽は定かではないが、日本人すら食べられなかった貴重なゴボウを捕虜に食べさせたら「木の根を食べさせる拷問」の容疑をかけられたとか

*12 この方法は戦術面においては有効だが、主要な経済拠点である東京を危険にさらすことになる。

*13 ユーロは各国政府から独立した欧州中央銀行が発行しているため、各国政府が勝手に刷り増すことはできない。米ドルが基軸通貨であるのは事実上のことでしかないため、米ドルの信用が失われれば基軸通貨としての地位を失う。いずれにせよ、通貨を刷り増して資金調達に充てることは事実上不可能である。