【偏向報道】喫茶ステラと死神の蝶
神戸新聞に次のような記事が掲載された。
アダルトゲームが人気洋菓子店「●●・●●●」外観を無断使用
12月20日に発売予定のアダルトゲームの舞台に、全国的な人気洋菓子店「●●●●●・●●・●●●」(●●県●●市)の外観が無断で使われていることが分かった。 制作側は著作権に抵触しないよう細部を変えたとするが、店側はイメージが損なわれかねないとして発売後の抗議を検討している。
ゲームは大阪市のソフトウエア会社が制作した「喫茶(カフェ)ステラと死神の蝶(ちょう)」。 主人公やヒロインが働く店の外観に●●・●●●を使っている。 発売を前に会員制交流サイト(SNS)で絵が拡散され、既にファンが舞台を巡る「聖地巡礼」が始まっている。
神戸新聞社の取材に、制作側は店の許可を取らずにモデルにしたと認めたが、店のロゴを消して石垣の色も変えるなどしているため「著作権の問題はない」と説明。 ゲームやアニメ、漫画で建物を描く際は、所有者や権利者に許可を得ないケースが多いとしている。
情報・メディア法に詳しい関西学院大学大学院司法研究科の丸山敦裕教授(憲法学)は「性的な場面で使えば営業妨害になる可能性もあるが、背景に使うだけなら削除などを求めるのは難しい」と話す。
店側は「年齢制限があるゲームの性質上、客に不快感を与えかねない」とし、発売後に使用を確認して対応を検討する。 同店広報室は「(制作側に)許可していないということは皆に知ってほしい」とした。
制作者と店の間の問題は当事者間の問題なのでここでは深く立ち入らないこととする。 ただ、報道のあり方には苦言を呈したい。
「年齢制限があるゲームの性質上、客に不快感を与えかねない」として迷惑だと訴える店側の主張も至極尤もなものである。
一方で、「店のロゴを消して石垣の色も変えるなどしているため『著作権の問題はない』」「ゲームやアニメ、漫画で建物を描く際は、所有者や権利者に許可を得ないケースが多い」にもおかしな所はない。 肖像権や著作権を無限に認めると、街中で撮った写真をネットに上げるだけにアウトになるし、既存店のデザインに少しでも似た新規店舗もアウトになる。
現実問題としてどこかに線を引かなければならないので、実際には、類似性、必要性、受忍限度、その他の社会通念等に基づいて判断されることになる。 結局は、「情報・メディア法に詳しい関西学院大学大学院司法研究科の丸山敦裕教授」の説明の「背景に使うだけなら削除などを求めるのは難しい」の通り、容易には白黒つけられない問題である。 専門家ですら白黒つけられないものを専門家ではない報道機関に白黒つけられるわけがない。 つまり、私法上の利害の衝突にすぎないのであって、どちらかが善でどちらかが悪という単純な図式ではない。
にも関わらず、制作側が悪であるかのような報道の仕方は、明らかな偏向報道であろう。 実際に許諾が必要とまでは断定できない事例であるのに、「無断で使われている」などと書かれているとおり、この神戸新聞の記事は中立的立場では書かれていない。 これでは、制作側が、許諾が必要であるにも関わらず、その手続きを無視した傍若無人な行動により、店側に言われなき被害を押し付けているという書き振りである。 また、発言の切り取り方にも悪意が見える。 「著作権の問題はない」では、あたかも横柄に開き直ったかのように見えるが、それが発言の一部であれば、全体を見なければ制作側の態度はわからない。 発言全体を見せずに横柄に開き直ったかのように見えるような切り取り方をしている点も、制作側に悪しき印象を植え付けようとする悪意が見て取れる。
この記事を書いた記者は、アダルト=悪という偏見に囚われているのだろう。 そのような人に何か言ったところで、聞く耳など持つはずがなく、かれらの原理的な主義主張を延々と聞かされるのがオチである。
製作者が背景の差し替えを決定したことを受けて、また、神戸新聞は鬼の首を取ったかのような記事を書いている。 しかし、その事実をもってしても、神戸新聞の偏向報道を擁護することにはならない。 何故なら、世の中は、正しい側が勝つようにはできていないからである。 報道は大きな力をもっており、中小企業ではそれに対抗できない。 「アダルトゲーム」の世界では、1万本売れればヒット、10万本売れれば大ヒットだから、自分達の行動が正当だと訴える体力もない。 また、そのことで世間に騒がれれば、余計に店側が望まない状況が加速する。 中小企業が問題を抜本的に解決する手段を持ち合わせているわけもないから、報道された時点で製作者には自ら引き下がる以外の選択肢は残されていない。 ようするに、一定の力を持った報道機関が中小企業を虐めていて、対抗する手段のない中小企業側が泣き寝入りをしただけなのである。
最後に、製作者に一言苦言を言っておきたい。 人気店をモデルにしたことは大変迂闊であった。 客が少ない店であれば、「聖地巡礼」で客が増えることを好意的に捉えてもらえるかもしれない。 しかし、人気店では、客数は既に足りている。 だから、「聖地巡礼」が増えることで「年齢制限があるゲームの性質上、客に不快感を与えかねない」ことの方を問題視することは自然な考えであろう。 そうした店側の反応をあらかじめ予測し、人気店をモデルにすることを避けていれば、このようなトラブルには巻き込まれなかった。 その想定の甘さは反省する必要があろう。
Keyword(s):
References: